【写真提供：共同通信社】２０００年１０月２０日、「ＯＮ対決」の日本シリーズ開幕を前に、健闘を誓い握手するダイエーの王貞治監督（左）と巨人の長嶋茂雄監督＝東京ドーム

　いよいよ日本シリーズが開幕する。5年ぶりのリーグ優勝からCSで阪神を一蹴した読売巨人か、それともレギュラーシーズン2位からCSで下克上を果たした福岡ソフトバンクか。令和となって初めての日本一は、果たしてどちらのチームになるのだろうか。

注目が集まる頂上決戦を前に、1989年から2018年までの「平成30年間」の日本シリーズを振り返り、そこから「勝負のカギ」を探し出したい。

■19年ぶりの対決、有利なのは？

　平成時代の過去30年間を振り返る（表１）と、巨人が出場10回で日本一6回、ソフトバンク（ダイエー時代も含む）は出場8回で日本一7回を誇る。両者の直接対決は2000年の1度のみで、実に19年ぶりとなる。

その年は「ON対決」と話題を集め、結果的には長嶋茂雄監督率いる巨人が2連敗の後の4連勝で日本一に輝いた。だがその一方、ソフトバンクは最近5年間で4度の日本シリーズ出場を誇り、そのすべてで日本一となっている。現チームの経験値はソフトバンクの方が上だろう。

さらにリーグ別の日本一回数を見ても、セ・リーグ球団の12回に対して、パ・リーグが18回。確かに今季のレギュラーシーズンで巨人がセの1位で、ソフトバンクはパの2位に甘んじたが、その成績は巨人の77勝64敗2分けの勝率.546に対して、ソフトバンクが76勝62敗5分けの勝率.551と僅差ではあるが上回っている。

■重要なのは初戦よりも第3戦？

　では、日本シリーズにおける「勝負のカギ」はどこにあるのか。巷では「初戦が大事」、「それよりも2戦目が重要」という声も聞かれる。そこで改めて過去30年の日本一チームの回戦別勝敗（表２）を見ると、第1戦に勝利したチームの日本一確率は「63%」となっている。

このことからも初戦で勝利すればシリーズ全体を有利に進められる場合が多いことが分かる。しかし、それ以上に勝利数が多かったのが、第3戦である。平成に限ってではあるが、日本一となった30チーム中23チームがシリーズ第3戦に勝利。第3戦に勝った場合の日本一確率は、なんと「77%」となる。

■最も重要な「本拠地初戦」での白星

　「初戦よりも第3戦」――。このデータをさらに細かく解析したい。そこで浮かび上がるのが、「本拠地初戦」という文言である。

　過去30年の日本一チームの戦績＆本拠地初戦勝敗（表３）を見て分かるように、日本一となったチームは、第1戦か第3戦（奇数年はパ・リーグ球団が、偶数年はセ・リーグ球団が第1・2戦と第6・7戦を本拠地球場で開催。相手球団は第3・4・5戦を本拠地球場で開催する）の本拠地初戦の試合に勝利するパターンが多く、その成績は24勝6敗となっている。

過去、下克上で日本シリーズに出場して日本一に輝いた5チームも、すべて本拠地初戦を勝利している。普段よりも格段上になるファンの声援、そして期待と重圧を「白星」に変えることができたチームが、日本一へたどり着くことができる。そのことが、データで証明されている。

■両軍エースのピッチングに注目

　その大事な「本拠地初戦」のマウンドに上がるのが、予想では千賀滉大と菅野智之の両軍エースとなっている。

　千賀は過去5年間で巨人戦2試合に登板（表４）。2勝0敗と勝利し、三振も奪ってはいるが、ヒットを数多く打たれ、失点も喫している。

今年6月21日の対戦でも、試合自体は8対3で勝利したが、千賀自身は3回に阿部慎之助に先制タイムリーを許し、5回には丸佳浩に被弾。坂本勇人を4打数4三振に仕留めた一方、丸には3打数3安打と打ち込まれた。千賀の日本シリーズ第1戦でのパフォーマンスが、シリーズ全体の流れを決めることになるかも知れない。

　一方の菅野は過去5年間でソフトバンク戦3試合に登板（表５）。2017年6月13日の対戦で3安打1失点の快投で完投勝利を収めたが、今年6月23日の対戦では初回に4失点（自責2）を喫して自身プロ最短となる1回0/3で降板した。

今季は好不調の波が激しく、腰痛で9月中旬から戦列を離れており、CSも登板回避。日本シリーズ第3戦、本拠地初戦に照準を合わせて調整を続けており、そこでどのようなピッチングを披露するのか。

リーグ優勝会見で「僕は何もしていない」と話した手負いのエースが、日本最高の舞台で華麗な復活を遂げれば、巨人の7年ぶりの日本一も近くになるだろう。

　果たして、結末はどうなるか。ジャイアンツとホークス。平成30年の中で直接対決は1度のみだったが、その1回も含めて30回中17回でどちらかのチームが日本シリーズに出場した。迎えた「令和元年」に実現した19年ぶりの直接対決は、新たな時代の盟主を決める、大きな意味を持つ戦いになりそうだ。