- 大学野球
2017.06.02 14:53
西川元気(東洋大)大野奨太らも背負った背番号「25」を背負い日本一目指す
★再確認した責任の重さ
今春、12季ぶりのリーグ優勝に輝いた東洋大でキャッチャーを務める西川元気。浦和学院では3度甲子園の土を踏み、3年春には正捕手として日本一に輝いた。当然、自信を持って東洋大の門を叩いたものの、現実はそれほど簡単ではなかった。
「全然通用しないんだなと思いましたね。大学野球のレベルが高いというよりは、自分自身のレベルが思っていたよりも低いんだなと。バッティングや送球など、全ての面でこんなにヘタなんだなと思いました」
1年目は公式戦のベンチに入ることはなかった。2年生になるとマスクを被る機会も増え、3年からは全試合でスタメン出場し、レギュラーを掴んだ。とはいえ1人でマスクを被り続けたのは、12試合中わずか3試合。秋こそ半数以上と大幅に増えたものの、交代を命じられる理由ははっきり分かっていた。打撃面ではなかなか当たりが出ず、守備面では失点が重なり試合展開を崩していた。
「それでもスタメンで出して頂いていたのは、期待されているから。しっかりしないといけないなと思いながらも、1年間結果を出せずに悔しかったです」
10年前から続いた5連覇に貢献した際、捕手は大野奨太(2007~08年/現日本ハム)や佐藤貴穂(2009~10年・セガサミー)が、1シーズンをほぼ1人でマスクを被り続けた。東洋大は2008年秋の大野を最後に、1人の捕手がフルイニング出場を果たしたことはない。その後は1シーズンに最多で6人、3~5人の捕手が出場することも珍しくない状況が続いていた。
今春、2連敗を喫した開幕カードこそ途中交代となった西川だが、以降8連勝を飾った全試合ではフル出場を叶えた。優勝が決まった最終節は9打数無安打と、昨年であればベンチへと退いても不思議ではない状況にも、最後まで出場を果たした。
「打てないなりにも使ってもらえて自信になりました。あまり打てなかったのは去年同様でしたが、守りに入った時には引きずらずに切り離して考えられたのがよかったと思います。切り替えようとしたのではなく、自然に切り替えられていました」
実は開幕前の激励会で、西川は高橋昭雄監督から「今年勝てるかどうかはお前次第だ」と直接言われたという。もちろん彼自身、すでに最上級生としての自覚が芽生えていたが、指揮官からかけられた期待のこもった言葉に、改めて自分の担う役割や責任の重さを再確認した。
「納得できないことや、悔しいことがこんなにある野球人生は初めてです。でも高橋監督には野球やそれ以外の精神的なことも教わって、すごく成長した実感があります。春の対國學院大2回戦で点差が開いた終盤、ふと監督を見たときに『俺はこの人に育てられたんだな』と感慨深くなりました(笑)。ありがたいなあと」
★背番号25に恥じない活躍を
東洋大の黄金期ともいえる時代を支えた大野、佐藤は打てるキャッチャーとしてもチームに貢献。ともに東洋大の正捕手がつけてきた25番を背負った2人(※)のイメージが西川の中にもある。※大野は4年時主将のため背番号1
「やっぱり東洋のキャッチャーということに特別な意識はあります。3年生になる前には25をつけたいと思っていました。ただ実際につけられても結果が出なかったので、これでは25番をつけているのが恥ずかしいし悔しい。歴代の素晴らしい先輩キャッチャーの方たちと同じように優勝して認められたい。恥ずかしくないキャッチャーになりたいと思っていました」
そんな西川だが、高橋監督から送球面に関しては「合格」のお墨付きをもらっている。入学当初に苦しんでいた送球力向上の意外な恩人を教えてくれた。それは西川の1学年上で、現在はNTT東日本でプレーする阿部健太郎だった。
「3年生になる前の紅白戦で盗塁を全くアウトにできなかった時期があったんです。でも二塁に投げたヘロヘロボールを、阿部さんのうまいタッチでアウトにしてくれて。盗塁を刺せるんじゃないかな? と勘違いし始めたら本当にいいボールがいくようになったんです。そこで自信が出てきて練習を積み重ねた成果だと思います」
6月5日に開幕する全日本大学野球選手権。西川にとっては久しぶりの全国の舞台になるが、不安な思いが大きいという。
「東都の代表校は東洋が6年前に優勝して以来、この大会で日本一を取っていません。リーグの代表として行くからには負けられない、東洋は全国大会で勝たなければいけないというプレッシャーがありますね。気迫溢れるような戦いぶり、さすが東洋だなと誰もが思う野球をしたいなと思っています。一戦必勝の中で日本一を目指していきます」
戦国東都を勝ち抜いた代表としての使命は重いが、西川個人にとっても自信を掴み、飛躍のきっかけとなる大会になるか。6年ぶりの日本一を叶え、憧れの大野や佐藤に肩を並べたい。
文・写真:山田沙希子