- 社会人野球
2019.10.10 15:00
入団拒否から3年。未完の大器が望む2度目のドラフト 山口裕次郎(JR東日本)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 社会人編】
3年前のドラフト会議では、日本ハムから6位で指名を受けながらも入団を拒否し、社会人野球のJR東日本へ進んだ山口裕次郎。
履正社高時代は寺島成輝(ヤクルト)と共に左腕の二枚看板の一角として活躍。3年春の大阪大会では決勝でセンバツ帰りの大阪桐蔭高と対戦し、強力打線を5安打1失点に抑えて完投勝ち。
近畿大会でも準決勝は智弁和歌山高に対し7回を投げて8奪三振。決勝の智弁学園戦でも先発して5回を零封とチームの優勝に貢献した。最後の夏は大阪大会で自己最速の145キロをマークし、甲子園に出場。3回戦の常総学院高戦では先発のマウンドも踏んだ。
ただ、結果は2回途中でKO。同年秋のドラフト会議では4位以下の指名を受けた場合は社会人野球へ進む意志を事前から明確に示していたこともあり、さらなる成長を求めてJR東日本でプレーすることとなった。
社会人1年目のシーズンイン直後から登板機会に恵まれた山口。3月のJABA東京スポニチ大会ではチームの公式戦初戦でいきなり救援デビューを果たし、2戦目のJFE東日本戦ではなんと先発も任されるなど懸けられた期待は大きかった。
ただ、この頃、フォームの改造に取り組んでおり、ケガの防止や真っすぐの質を上げる目的でテークバックの際に背中側へ入り込んでいた左腕を早く振り切るように変更。
当初は得意のスライダーやカーブのキレが増し、高校時代は使い物にならなかったチェンジアップも制球が良くなるなど変化球に大きな効果をもたらしたが、その一方でストレートの球速は失われていくことに。
徐々にマウンドへ上がる機会も減っていき、昨季はJABA大会の公式戦登板がわずか2試合。まさに、どん底とも言える状態を経験した。それでも尻や肩周りを鍛え、フォームを見直して腕をしっかりと上げるようにするなど弛まぬ努力を続けることで、一時は130キロ前半から中盤までしか出なかった球速も今春には142キロまで回復。
5月の都市対抗・東京都二次予選では第2代表決定トーナメントの東京ガス戦で先発を任され、重要な場面での起用も増えていった。
こうして復活への道を必死に駆け上がっている山口。履正社高の岡田龍生監督には「プロでも十分にやれる。体力は寺島よりも上」と評され、JR東日本の堀井哲也監督にも「新人時代は田嶋大樹(オリックス)よりも精神面や制球力などトータルで上回る」と言われた大器だけに、今秋のドラフト会議で2度目の声が掛かるのか注目だ。
記事:大平明