- 独立リーグ
2019.10.09 14:30
シンデレラストーリーを突き進む最速149キロのサイド右腕 松岡洸希(埼玉武蔵ヒートベアーズ)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 独立リーグ編】
シンデレラストーリーを急速で駆け上がる高卒1年目、19歳のサイドスロー右腕だ。小学1年生の頃に神宮球場に行き青木宣親(ヤクルト)に憧れて野球を始めたが、中学時代は目立たぬ小柄の選手で身長は155センチほど。軟式球から硬式球に持ち替える高校進学も近所の公立校である桶川西に進学した。
この3年間で身長が155センチから180センチにまで急成長。もともと肩は強かったことやチーム事情もあり、高校最後の1年間は三塁手をしながら投手も担った。昨年の夏は背番号「5」。初戦で前年度の甲子園覇者・花咲徳栄とぶつかり、1対10の7回コールド負け。打っては3打数3安打だった松岡だが、投げては2番手として登板したものの野村佑希(日本ハム)らを擁する強力打線の勢いを止めることはできず短い夏が終わった。
ただ最速で143キロを計測するまでになっていた松岡は高校の監督やコーチの勧めもあり、独立リーグへの挑戦を決めた。大学からの誘いもあったが「独立でやって、もしダメなら区切りをつけて別の仕事をしよう」と潔い覚悟を持って、新天地へ踏み出した。
もうひとつの大きな転機はサイドスローへの転向だ。片山博視選手兼ヘッドコーチ(元楽天)に勧められた。最初は使う筋肉が違うため筋肉痛などもあったが、順応していくと球速がオーバーハンドだった頃の143キロから6キロも上がり最速149キロにまで急成長。変化球もスライダー、カットボール、チェンジアップを駆使。ヤクルトの絶対的守護神だった林昌勇をそっくりそのまま参考にしたフォームで、元NPB選手も複数いる各チームの選手たちを抑え込んでいった。
長距離のバス移動や埼玉特有の暑さも「高校時代から毎日(この環境で)過ごしていたので」と苦にならず1年のシーズンを乗り切り、先月下旬のNPB球団との交流戦でも好投を続けた。
「自分の持っている球を投げれば大丈夫、とメンタル面も向上できました」と、まだあどけなさが残る表情を崩して力強く言い切った。
怖いものなしの快進撃はまだまだ続きそうな予感に溢れている。
文・写真=高木遊