- 高校野球
2019.10.10 14:00
野性味あふれる走攻守 素質は根尾、小園級
森敬斗(桐蔭学園高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
好きな言葉は「オールアウト」だそうだ。「練習でも試合でも燃え尽きるまで。全力で全てを出し切ることがモットー」だと言う。
「あの元気がいい。打つ、投げる、走る、どれも野性的な感じがする」
こう話すスカウトがいて、言葉通りにハッスルプレーに目を奪われる。
桐蔭学園といえば、千葉ロッテの鈴木大地と楽天の茂木がいて、二人に共通するのはガッツだ。茂木がプロ入りするとき、「尊敬するのは高校の先輩の鈴木さん」と聞いたことがある。
鈴木大地が「グラウンドで全力で走ること、そして大きな声を出して練習に臨むこと、この二つは誰にも負けません」とかついて語っている。その伝統を森も受け継ぐ。
森は主将としてミスがあったら厳しく指摘する。気持ちのこもらないプレーには叱責を辞さない。
それを実践するにはまず、自分に厳しくなくてはいけない。昨年秋の県大会、横浜との決勝で自らのエラーも絡んで11対2で大敗した。また、関東大会で優勝した後の明治神宮大会は筑陽学園にこちらも10対1の惨敗。やはり3失策を犯してしまう。エラーがチームに影響を与えたことは否めない。
しかし、失敗しても下を向かない。この2試合で心を入れ替える。
「一喜一憂は周囲に与える影響が大きい。心を平常に保つこと」そんな人間が目標になった。
冬の地道な練習でリーダーシップを発揮する。走り込みを他の選手より、一本でも多く走ったそうだ。つらい時にこそ楽しい顔を。積極的に声を出し仲間を鼓舞した。森には率先垂範が似合うのだ。
神奈川の名門、桐蔭学園。今年、平成最後のセンバツに16年ぶりに出場。チームを引っ張ったのが森と言っても言い過ぎではない。
静岡市の出身だ。高校野球熱が高く、レベルが高い神奈川にやってきた。甲子園までの道のりが遠いからあえて、やってきたという。その意気が桐蔭を復活させた。
1年の夏から背番号15で公式戦に出場した。1年秋からショートのレギュラーを獲得する。
2年夏の北神奈川大会はベスト8止まりだったが、2年秋から主将になって秋季大会は県で準優勝。関東大会では24年ぶりに優勝する。
その関東大会は4試合で17打数7安打、3ホームラン、12打点の大活躍だった。初戦・常総学院戦で右越え逆転サヨナラ満塁弾、決勝の春日部共栄戦でもライトへ2ホーマーした。
センバツでは啓新に破れるが、自身は4打数3安打1打点と気を吐いた。
あるスカウトが言う。
「スピードは魅力的。肩もいい。ドラフトでは2位までで指名されるかも。高校生のショートではナンバーワンと言ってもいい」
50メートル5秒8の俊足。バッティングも癖がなく長打力もある。守りはより速く、より丁寧に、を心がける。
WBSC U-18ワールドカップで全8試合、センターを無難にこなした。そしてトップバッターの大役を務め、打率は3割2分を残している。また9四死球を選んだ点も評価される。
小園(広島)や根尾(中日)に匹敵する、と言うスカウトがいるほどの素質の持ち主だ。
(文・清水岳志)