- 高校野球
2019.10.09 16:00
163キロを掴んだ捕手 攻守で夏ベスト4へ
藤田健斗(中京学院大中京高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
大船渡の佐々木郎希の163キロのボールを直接、捕ったのは藤田だった。4月のU-18日本代表候補合宿でのこと。
「今までに見たことのないボール。気が付いたらミットにはいっていました」
今年の夏の甲子園は好捕手が多かった。山瀬(星稜)、東妻(智弁和歌山)とともにプロが注目する。
藤田は主将、4番でチームをけん引し、夏のベスト4まで駆け上がる。
まず、守備の面。
強肩ぶり、セカンド送球は2秒を切る。崩れた態勢からでも放れる体の強さ、バランス。甲子園では3度、盗塁を刺した。
なかでも東海大相模戦、積極走塁のそこを封じたことが勝利につながっている。
中京学院大中京はタイプの違った投手がいた。193センチの赤塚(プロ志望届提出)、左投手に下手投げなど。バラエティーに富んだ投手陣を巧みにリードして、東海大相模、作新学院など優勝候補を倒しての躍進だった。特徴を的確につかむ、試合の流れを読むことに冴えを見せた。
ワンバウンドのストップも見事だった。甲子園では4試合でワイルドピッチは1回のみだった。ピッチャーは安心して変化球を投げられる。
隣県の滋賀県、長浜市から中京学院大中京へ。
打撃の面では、1年春からベンチに入った。秋には既に4番で捕手のレギュラーに座る。県の決勝戦で一発を放った。高校通算23ホームラン。
2年夏の県大会で打率5割、1ホームラン、8打点を記録した。
2年秋から主将。3ホームランの活躍で県で優勝、東海大会ベスト4になった。ただ、2年連続であと1勝が足りずにセンバツはならなかった。
今年の甲子園の北照戦、勝ち越しのタイムリーで1安打1打点、東海大相模では3安打1打点、作新学院戦が3打数2安打。3年夏の最後は星稜との準決勝。奥川からもしぶとくライト前ヒットを放っている。大会通算4割6分7厘。
甲子園での中京学院大中京は不思議と7回に大量点をとって逆転に繋げていた。
「7回やで、絶対に点が入るぞ」と藤田は円陣で鼓舞し続けた。
星稜戦でも7回、藤田は右前打を放つ。橋本監督は「やっぱりあいつがチームの柱。ここまでよくやってくれた」という言葉が印象的だった。
「捕りにいったらさらに伸びて、何度もミットの土手に当ててしまった。目も体も追いつかなかった。もっとうまくならないといけない」
佐々木のボールを受けての感想だ。
再びそんな経験ができるだろうか。それとも、佐々木の投球をバッターボックスで待ち受けるのか。
(文・清水岳志)