- 高校野球
2019.10.04 13:30
150キロ左腕は将来、雄星のそばにいる
及川雅貴(横浜高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
今年のセンバツに横浜は選ばれたのだが、関東大会での準々決勝で敗退していて、実は微妙な立ち位置だった。選考委員から選んだ「決め手は及川投手」と理由が説明された。個人名が挙げられるのは異例のことだ。それだけ、存在が注目されたということ。
しかし名門でのラスト、3年生としての1年は納得のいくものではなかったのではないだろうか。
センバツは初戦負け。夏は神奈川大会の準々決勝で相模原に破れてセンバツの雪辱に行くことができなかった。
だが、及川の評価は変わらない。
長身の大型左腕は貴重な存在。プロ側の期待値は高い。
スカウトが言う。
「結果だけを見ているわけではないので。プロでも、ああいう腕の長い左腕は減っている。左であれだけのボールを投げられる左ピッチャーは少ない。スライダーのキレ、走る姿、躍動感がいい。剛の代表が菊池雄星なら、しなやかさの代表が及川」
「未完の大器。投球はこれから磨けば、伸びしろがあるということ。身体の力は高い。その大きな体をさらに作っていけば将来、メジャーに行ける投手になる」
小学校6年生で千葉ロッテジュニアチーム入り、中3でu-15 野球 の日本代表入りをした。
高1では春からベンチ入り。春の神奈川県の決勝、東海大相模戦の先発に抜擢されたが、1回6失点のほろ苦い公式戦デビューだった。
夏はチームが甲子園に出場。初戦の秀学館戦にリリーフ登板した。3イニングを0点に抑えた。
2年春に152キロを記録。夏の甲子園、花咲徳栄戦で先発、6回途中まで投げて勝ち投手になった。
独り立ちした2年秋の県大会、41イニングで59個の三振を奪って、センバツにつながるのだ。
最速は153キロまで伸びた。柔らかい腕の振りから130キロを超える高速スライダーに打者は思わず、バットを振ってしまう。
奪三振率が高いがリリースポイントがばらつき、コントロールを乱すことも少なくない。スライダーが制球できなくて、ストレートを狙われて大量失点というパターンもあった。
センバツの明豊戦、4回で5四球を出す乱調。5安打をからめられノックアウトされた。
この後、背番号1をはく奪されるショック療法も味わったが、夏も結果が結びつかなかった。
高校ビッグ4の一人と言われてきたが、侍ジャパンU-18野球日本代表からも漏れてしまう。
下半身を鍛えて、フォームの安定。ゲーム中での修正能力が課題だ。
まだ細身だし、じっくり育てられれば、石井一久(元ヤクルトなど)のような、大型の左ピッチャーに大化けする可能性を秘めている。
(文・清水岳志)