- 高校野球
2019.10.11 12:34
奥川と連れ添った8年 星稜ナンバーワン強肩捕手 山瀬慎之助(星稜高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
まずはスカウトの評価を紹介しよう。
「二塁送球で1秒8台を常に出しています。地肩の強さは最近、見た中では断トツ。大学生、社会人と合わせてもピカイチ。ソフトバンクの〝甲斐キャノン〟くらいの強さはある」
プロのどの球団も捕手不足。何としても欲しい選手の一人だろう。
名前の〝慎之介〟は先日、今季限りで現役引退を発表した巨人の阿部慎之助に由来する。目標とする選手ももちろん、阿部だ。
この阿部を筆頭に、古田敦也(元ヤクルト)、城島健司(元ソフトバンクなど)、打てて守れる捕手がいた。しかし、最近の球界はそういう部分では人材不足と言っていい。山瀬が名乗りを上げられるか。
今年の高校生キャッチャーは人材が豊富だ。山瀬、東妻(智弁和歌山)の他に中京学院大中京の藤田、明石商の水上らがそうだ。誰が将来出てくるのか興味深い。
大エース、奥川とは幼馴染で小学校4年生から同じチームでバッテリーを組んできた。宇ノ気中では全国制覇を果たしている。
二人でどの高校に進学するか。
「奥川が最後まではっきりしなくて、自分が星稜に行くと言ったら、奥川も〝じゃあ、星稜にする〟と決めました」
甲子園の決勝戦の前のインタビューだったか、そう言って報道陣を笑わせた。
山瀬あっての奥川だった。
星稜では1年秋から正捕手になる。2年のセンバツでは23年ぶりにベスト8に進出した。以後、4季連続甲子園出場。3年夏は準優勝を果たす。
「投手は捕手が育てる」。昔からよく言われてきた。
智弁和歌山との3回戦での奥川の完璧な投球を引き出した。この試合を筆頭に甲子園ではリード面はナンバーワンだと言っていい。
奥川の女房役という枕詞がつくが、守るだけではなく、甲子園ではバッティングでも結果を残す。13試合で45打数22安打。4割8分9厘で12打点を記録した。
3年夏は下位の打順ながら22打数10安打と好機を作った。決勝の履正社戦は3安打と気を吐いた。
「主将として一番、諦めない姿勢を示してくれた」。星稜の林和成監督の労いの言葉だった。
キャッチングの巧さも評価される。ミットを動かさないで取るので、微妙なボールもストライクのコールを受ける技術がある。
冒頭でも紹介したように、セカンド送球が平均で1秒8となると正真正銘の強肩キャッチャーだ。林監督も「20年間、選手を見てきたけど、星稜史上、一番の地肩の持ち主」と言う。送球の時のステップが小さく、無駄な動きが少ないから、体の上下動が抑えられ正確で素早い。
WBSC U-18ベースボールワールドカップでは水上(明石商)にレギュラーを譲ったが、8試合中3試合でスタメン。奥川が投げたカナダ戦は山瀬がマスクをかぶり、奥川の18奪三振の快投を演出した。
プロでの目標はもちろん、阿部慎之助だ。
(文・清水岳志)