- 大学野球
2019.10.02 14:00
名実ともに抜群。即戦力が期待されるドラフト1位候補右腕 森下暢仁(明治大)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 大学生編】
いつ何時でも主将としての振る舞いが自然とできる。そんな投手、人間に4年間を経て成長していった。
高校時代から「ドラフト上位候補」と呼ばれていた。大分商で1年夏からベンチ入り。登板こそ無かったが甲子園の土を踏んだ。最後の夏は大分大会決勝で敗れて甲子園出場はならなかったが、侍ジャパンU-18代表に選出。オコエ瑠偉(楽天)や小笠原慎之介(中日)、清宮幸太郎(日本ハム)らとWBSC U-18野球ワールドカップを戦った。
森下は予選ラウンドのチェコ戦で7回無失点、12三振を奪うなど3試合の登板すべてで無失点の好投を見せた。それでも「投球であったり、考え方であったり、もっと高いレベルにならないと、プロに行っても通用しない」と実感した。また、明治大の善波達也監督や当時のエースだった柳裕也(現中日)と話す機会があり「プロじゃできない様々な人生経験もできる」と、自らの意志で大学進学を決めた。
そして今年、柳以来の投手としての主将に就任。2月のキャンプで既に善波達也監督が「森下を主将にして本当に良かった」と話すほど、取り組みや人への伝え方などが大きく変わった。野手の特守にも積極的に参加したり、ミーティングでも常に周りを見渡して発言するなど、何事も率先していく姿を見せた。
2年時から侍ジャパン大学代表に選出され、国際試合では活躍を遂げてきた。だが、過去3年間でのリーグ戦では計9勝と、能力からすると物足りない成績。試合の要所や終盤で打ち込まれることも多かった。それが今春、ほとんど無くなった。チームを鼓舞するような気迫溢れるような投球と、味方のミスにも動じない冷静さを兼ね備えて好投を続けた。
4勝1敗、防御率2.03の好投でチームを5季ぶりの優勝に導くと、大学選手権では東洋大を完封、佛教大を1失点完投で抑えて胴上げ投手に。日米大学野球でも3試合に先発し66球、70球、59球と少ない球数で5回までを投げ、わずか1失点。2勝を挙げて防御率1.20という文句のない好成績で最高殊勲選手賞を獲得した。
今秋はシュアな打撃を生かして、投手としての先発時には5番に座り、9月終了時で12打数5安打(打率.417)二塁打3本と活躍を遂げている。30日の対早稲田大3回戦では9回に味方の失策などが絡みピンチを来ると、決勝打を打たれたところで降板。天を仰ぎ悔しさを隠しきれなかったが、それでもベンチに戻るとすぐに最前列の位置で後続の投手を激励するなど、主将としての矜持を失うことは無かった。
「“来年の即戦力”という意味ではダントツでナンバーワン。国際試合の経験もあるし、球速・キレ・制球力などすべての要素を持っている」(楽天・福田功プロアマスカウトアドバイザー)
30日の試合の視察に訪れたスカウトもそう話すなど高評価は不変。大学ナンバーワン右腕、即戦力右腕として運命の時を待つ。
文・写真=高木遊