- 高校野球
2019.10.16 17:00
中谷監督の愛弟子 高校生NO.1強肩捕手 東妻純平(智辯和歌山高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
入学した時は遊撃手だったというから、あらためて意外に思う。
「プロでもこれほどの強肩はそうはおらん。チームにも本人の将来のためにも捕手がええ」
中谷仁監督はキャッチボールを見た瞬間に、当時の高嶋監督に相談したという。
ショートを守っていた本人に「甲斐拓也になれる」といったそうだ。遠投125メートル、二塁送球1秒8台を記録することもある。今や、高校生ナンバーワン捕手の評価を得るまでに成長した。
阪神、巨人など捕手としてプロ野球界での経験豊富な中谷監督が、2017年にコーチに就任。東妻は同年の入学で、中谷監督の頭脳のすべてを一から注入された、言わば愛弟子だ。
「東妻? あいつはまだまだですよ。過大評価されすぎ」
これは甲子園のインタビュー通路での中谷監督の口癖だった。その一方で、キャッチング、ワンバウンドのストップも高校のトップレベルと評価する。
5回すべての出場機会で甲子園を経験した(1年夏は試合の出場なし)。それだけ東妻もいろんな高校野球人生を経てきている。
2年センバツ、発熱をしながら準優勝した。決勝では大阪桐蔭の根尾(現中日)から2点タイムリーを放っている。また、準決勝と決勝で二盗を阻止して強肩を披露している。
2年夏は大阪桐蔭に雪辱する前に近江に初戦敗退。
秋からは4番に座り、公式戦で3本塁打、16打点を記録する。
3年春のセンバツの1回戦、熊本西戦で自身23本目(通算33本)、真ん中のストレートを3ランしている。このゲームは監督として中谷監督の初勝利になって、ウイニングボールを東妻が手渡した。
しかし、準々決勝で明石商にサヨナラホームランを喫して敗戦。「長打だけを警戒する場面。ボールゾーンに構えるべきだった、僕のミスです」と悔やんだシーンは印象的だった。
夏こそ優勝、と臨んだ3年夏。米子東戦は3安打2打点。明徳義塾戦は1イニング3本塁打の同校のタイ記録となるソロホームランをセンター越えに打った。そして、星稜との3回戦。奥川に4三振を奪われて延長14回、タイブレークで敗退した。
「奥川はキレ、球威、コントロール全てにレベルが上だった」と目を赤くはらした。
センバツも夏もサヨナラホームランで敗退という苦渋を味わうことになった。
その雪辱をプロのステージで晴らしたい。
「体が強いからプロの厳しい練習でも生き残れる」と監督が言う。センバツ以降は指導もプロ基準になったそうだ。
スカウトの評価は高い。
「ホークスの甲斐拓也っぽいです。走攻守がそろっている。高校生の捕手ではNO.1。5季連続出場の経験から、周りを見てゲームをつくれている」
兄は千葉ロッテの東妻勇輔でバッテリーを組むことも夢見る。中谷監督に鍛えられ、他ではできないような甲子園での好ゲームの数々でマスクをかぶり続けてきた。それはプロでも生かされるはずだ。
(文・清水岳志)