- 高校野球
2019.09.30 17:00
坂本二世のスター性 華麗な遊撃守備を見よ 武岡 龍世(八戸学院光星高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
四国徳島から青森へ。高校1年から注目された存在だった。
八戸学院光星は坂本勇人(巨人)、北條史也(阪神)と攻守で中心となるショートを輩出してきた系譜がある。武岡も〝坂本二世〟と言われてきた。
チームメイトの父兄から「スター」と呼ばれたというから、存在感は異彩を放っていただろう。ましてや主将でもある。
まず仲井宗基監督が言う。
「守備に関しては坂本勇人の高校時代より上ですよ」
重心低く、足の運びもスムーズだ。スカウトが言う。
「守備はもともと、申し分ない。ボディーバランスが良い。強豪のショートだもの、野球センスがある。球際に強いのが素晴らしい」
三遊間のゴロを難なく軽快にさばく。
キャッチャーの構えたところからコースを予想して三遊間よりを意識する。まずは周到な準備だ。ただ、これもいつも通りのプレーだ。
「守備は普段、それほど意識していない、普段の練習通りを心がけていて、難しく考えてはいない」という。その言葉から守備の自信が伺える。
WBSC U18ベースボールワールドカップで全試合にスタメン出場した。本職の内野のサード、ショートを主に担った。今年は坂下(智辯学園)、熊田(東邦)、韮澤(花咲徳栄)、遠藤(東海大相模)、森(桐蔭学園)ら内野手が多く選抜された。その中でも武岡の守備の安定感があったということ。守備での世代ナンバーワンは証明された形だ。加えてライトの守備にもついた。
高校では1年の春からレギュラーポジションを取る。仲井監督が1年でレギュラーに抜擢するのは数年ぶり、と言ったというから、センスは抜きんでていた。
2年夏の甲子園は2試合、7打数2安打。3年のセンバツは4打数1安打で広陵に初戦敗退。
そして最後の3年夏はベスト8に進出。1番打者としてチームをけん引する。
実は青森県大会で8番まで打順を下げるほどの不振からスタートする。3回戦の宿敵、青森山田戦での犠牲フライで吹っ切れる。準決勝で1番に定着して本来のバッティングを取りもどし、県大会は5割8分8厘と驚異的な打率を残した。
甲子園では開幕戦の誉戦でセンターのフェンス直撃の三塁打など3安打2打点。智辯学園との2回戦はバックスクリーンに飛び込むソロホームランを放った。この2本の長打は甘いストレートを逃がすにとらえたものだった。
準々決勝の明石商戦でノーヒット。1点差、9回裏2死二塁の同点機。平凡なライトフライに倒れた。悔いがあるとすれば、最後のバッターになって甲子園を去ることになったことか。
やや右足をオープンに構え、背番号は投手に見えるぐらいに構える。バットコントロールが巧みで、アウトコースも拾えるセンスがある。
武岡の粘り強さを感心する関係者が多い。「ツーストライクから食らいついてファールにして粘る。打つ方も球際に強い」と。
打って守れて、そして足も武器になる。中学生の時に、100メートル走で県で2位になったほどなのだ。
巨人・坂本は今年、巨人優勝の原動力になった。ほぼMVPを当確にしている。さて弟分。これ以上、明確な目標はない。先輩と同じ舞台で勝負を挑みたい。
(文・清水岳志)