- 高校野球
2019.10.07 17:00
奥川から3ラン 夏に開花した初優勝の立役者 井上広大(履正社高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】
令和の最初の夏を制した履正社。優勝ロードはセンバツの1回戦、星稜の奥川に17三振を喫し完敗したところから始まった。
150キロのストレートに加え、低めに制球される多彩な変化球に苦しんだ。履正社の岡田龍生監督は「奥川君に強くしてもらった」と繰り返し言った。センバツ以降、さらに打撃のレベルアップを図る。努力を積み重ねたから、その屈辱を晴らす機会が夏の最後に廻ってきたのだ。
夏の甲子園で履正社打線は霞ケ浦・鈴木、津田学園・前、明石商・中森など右の本格派投手を粉砕した。その中心に井上がいた。
井上は初戦、霞ケ浦の鈴木から第1打席でインコースのスライダーをレフトへホームラン。2回戦、津田学園の前から低めのストレートをツーベース。高岡商戦で5打点。外角の変化球をレフトに叩き込んでいる。そして決勝で奥川にリベンジを果たす。
井上もセンバツは4打席ノーヒット2三振だった。夏までの練習試合、4番を外された時があったと言う。「弱気になって初球を見逃すことが多かった。積極性に欠けていることを指摘されました。履正社の4番はそんなことじゃ、あかんねんと」。
そこから這い上がった。決勝戦3回の2打席目。二人の走者を置いて奥川の初球の変化球をバックスクリーンの左に打ち込んだ。高めに浮いた甘いボールを仕留めたものだ。ここに井上の成長がある。初回の打席はスライダーを見逃して三振。「同じボールで入ってくるのではないか」とスライダーを待っていたという。
甲子園6試合で打率3割8分5厘。3ホームラン、14打点。強打履正社をけん引した。
二つ上の先輩、安田尚憲(現千葉ロッテ)を彷彿させる重量感。187センチと大柄なスラッガータイプだが、ストレートにも変化球にも対応する。リーチの長さを生かして外角を捉える。また内角を上手くさばけるところも特長だ。
1年前に右ひざを手術したが、リハビリ期間の冬場、上半身の筋力トレーニングを中心にパワーアップした。ふところゆったり、力の抜けた構えから、柔軟性も併せ持つ。
高校通算49本塁打。外野を無難にこなすがサードも守れる。将来の4番候補だろう。
甲子園でホームランを打ったらプロへの道が開く、と思っていたそうだ。そしてその通りに。
さらに、プロへの道のエピソードがあった。夏の決勝戦後、甲子園の土を持ち帰らなかったという。「プロ野球選手として、またここに戻ってくるため」という理由からだ。実現する日が迫っている。
(文・清水岳志)