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大学野球

帝京大39季ぶり優勝!復活導いた豪華施設と異色の4番打者【首都大学野球】

★手厚い支援に最高の恩返し
 昨春、2部降格寸前の崖っぷちまで追い込まれた帝京大に1年後、歓喜の瞬間が訪れた。2対1で迎えた最終回、リリーフエースの菊地丈留投手(4年・帝京)が最後の打者をファーストゴロに抑えると、すぐさま歓喜の輪ができた。
 選手たちによる胴上げの後、唐澤良一監督は「選手が結束を持ってやってくれました。冲永佳史理事長に野球部の手厚い支援をしていただいたおかげです」と声を震わせた。

野球部寮内のトレーニングルーム(帝京大)

野球部寮の室内練習場(帝京大)

野球部寮の大浴場(帝京大)

※上から寮内に完備されたトレーニングルーム、室内練習場、大浴場。

 2013年、相模湖キャンパスの跡地の建物1棟を改装して作られた地上5階地下1階の野球部寮は大学球界随一の施設と言っても過言ではない。
 トレーニングルームには最新鋭のマシンが約20台揃う。また地下1階には7人分のティー打撃・3人分の素振りやシャドーピッチングができる室内練習場がある。もちろんすべて寮内にあるため24時間いつでも利用が可能だ。
 また生活面も充実している。洗濯機と乾燥機が28台あり(部員3人に1台の割合)で、大浴場にはシャワー28台・30人が一気に入れる浴槽があり、先輩・後輩関係なく「待ち時間」はない。各選手の部屋は広く、2人1部屋だが、仕切りがあって各自のプライベートも確保されつつ、生活が緩みすぎないようになっている。
 体の資本となる食事は、常に10種類ほどある中から、バイキング形式で部員たちが各自で必要な分を摂取でき、毎月の月初めに1カ月分のプロテインが全部員に支給される。
 こうしたことはすべて唐澤監督の発案と沖永理事長ら大学側の理解があっての充実ぶりだ。

野球部寮のある日の夕食(帝京大)

量・栄養バランス・味ともに充実した食事で、選手たちの体は4年間で見違えるものとなる。

★3年間ベンチ外だった男の急成長
 ただ、その環境を生かすも殺すも選手たちの意志次第だ。青柳晃洋投手(阪神)と西村天裕投手(NTT東日本)ら主力が抜けた昨年は、春季最下位に沈み、入替戦では先勝を許して2部降格寸前の事態にまで陥った。
 そんな苦しい思いを再び味わいたくないと、今年は木下和哉主将(4年・横浜隼人)ら4年生を中心に生活面から緩んだ空気を一掃し、多くの選手が全体練習後も室内練習場やトレーニングルームで汗を流した。

 その象徴的存在が、リーグ戦後半から4番に座った増田一樹内野手(4年・相模向陽館)だ。定時制高校出身という異色の経歴で公式戦のベンチに入ったことは大学3年間で1度もなかった。それでも「野球が好きで純粋に上手くなりたい一心でした」と諦めることなく、公務員試験の勉強とも両立させながらレギュラーの座を掴んだ。
 そして、前週までの出場5試合で4割を超える打率をマークすると、優勝のかかったこの日も、4回に貴重な2点目を挙げるタイムリーをセンター前に放った。
 高校3年夏の神奈川大会では全打席敬遠され、1度もバットを振ることなく、全国大会への道を閉ざされた増田だが、帝京大では最後の春に自らのバットでその道を切り拓いた。
 6月5日から開幕する全日本大学野球選手権に向けた抱負を聞くと、増田は「ファーストストライクからガンガン振っていきたいです」と笑顔を弾けさせた。また木下主将も「リーグ優勝して終わりではありません。もう1度気持ちをリセットして練習し、選手権でも優勝したいです」と高らかに語った。
 ハード面・ソフト面の両面が噛み合っての復活劇。その物語は、まだまだ終わらない。

増田(帝京大)

定時制高校に通いながらも高校通算39本塁打を放つスラッガーとして高校時代に注目を集めた増田は、大学生活最後の年に花を咲かせた。

帝京大vs明星大3回戦
帝京大 002000000=2
明星大 000100000=1
【帝】小倉、菊地—塚畝
【明】佐渡、坂本—大瀧

元ロッテの里崎智也捕手が在籍していた1997年秋以来の39季ぶり4回目の優勝を飾った帝京大。

文・写真:高木遊