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22日に日本シリーズ開幕 12球団の“直近日本一”で起きたドラマや名場面は?


広島と日本ハムが激突する日本シリーズが、22日に開幕する。18日には、黒田博樹投手が今季限りでの引退を表明。25年ぶりにリーグ優勝を果たした広島は頂点へ向けて士気が高まっており、1984年以来32年ぶりの日本一を目指し、パ・リーグの覇者・日本ハムに挑む。

■広島なら32年ぶり、日ハムなら10年ぶりの日本一

 広島と日本ハムが激突する日本シリーズが、22日に開幕する。18日には、黒田博樹投手が今季限りでの引退を表明。25年ぶりにリーグ優勝を果たした広島は頂点へ向けて士気が高まっており、1984年以来32年ぶりの日本一を目指し、パ・リーグの覇者・日本ハムに挑む。

 広島は四半世紀ぶりの日本シリーズ進出。「久々の頂上決戦」として思い出されるのは1998年の横浜ベイスターズの日本一だ。石井琢、鈴木尚、ローズらの「マシンガン打線」が機能し、大魔神・佐々木が最後に君臨。38年ぶりのリーグ優勝、日本シリーズ制覇に駆け上がった。

 1999年はダイエーが、前身の南海が1973年優勝して以来26年ぶりの日本一に。2005年のロッテは1974年以来31年ぶりに日本シリーズに出場し、シリーズ制覇を果たした。06年の日本ハムは1981年以来25年ぶりにリーグ優勝し、1962年の東映時代以来44年ぶりの日本一になった。26年以上のブランクで日本シリーズに出場した上記のチームは、すべて頂点に立っている。広島にとって、好データになる。

 昨年はソフトバンクがヤクルトを倒し、日本一。一昨年もホークスが制した。それぞれのチームの直近の日本一の戦いはどうだっただろうか。

【セ・リーグ】

○広島 1984年

 阪急との日本シリーズを4勝3敗で制した。広島の監督は古葉竹識、阪急は上田利治。日本一の立役者は7試合3本塁打10打点で外野手の長嶋清幸で、見事、MVPを獲得した。広島はシーズン16勝の山根和夫がシリーズ開幕投手を務めたほか、11勝で最優秀防御率2.20の小林誠二、10勝で防御率2位2.94の大野豊、13勝の北別府学、規定投球回には満たなかったが5完投で8勝を挙げた川口和久ら力のある投手陣がそろっていた。

 攻撃陣の中心は山本浩二、衣笠祥雄、達川光男らがいたが、このシリーズでは長嶋が今年の鈴木誠也のように”神って”いた。第1戦の8回。相手エース・サブマリン山田久志から左翼へ詰まった飛球を放ったが、それがスタンドイン。決勝アーチで勢いがつき、第3戦では阪急・佐藤義則から満塁本塁打。第7戦は再び山田から本塁打。シーズン中は巨人から2戦連続サヨナラ弾を放っており、最後までミラクル男だった。

○巨人 2012年

 前年のCS第1S敗退を受けてFA補強を敢行。ソフトバンクから杉内俊哉、横浜から村田修一の投打の軸を獲得し、2009年以来のリーグ優勝を遂げた。原辰徳監督が牽引し、就任1年目の栗山英樹監督率いる日本ハムと対戦。巨人が4勝2敗で勝利し、3年ぶりの日本一になった。

 巨人は打では外国人選手のボウカーが大活躍。シーズンでは十分な働きはできなかったが、第1戦では相手エース左腕の吉川から3ランを放ち、勝利に貢献。2勝2敗の第5戦でも札幌ドームで吉川から先制2ランを放ち、試合の流れを作った。第1戦と第5戦で勝利した内海哲也がMVPを獲得。巨人はこの年、アジアシリーズも制して、ペナントレース、交流戦、クライマックスシリーズ、日本シリーズ、アジアシリーズの5冠を達成した。

■横浜の“マシンガン打線”に、中日の継投による完全試合も…

○DeNA(横浜) 1998年

 前年に選手の底上げを図った大矢明彦前監督の功績もあってリーグ優勝、日本一になった。権藤博監督が東尾修監督率いる西武と対戦。4勝2敗で日本一になった。前述したとおり、マシンガン打線と呼ばれた強力打線を擁し、ハマの大魔神こと佐々木主浩投手がクローザーで君臨。先発の野村弘樹、斎藤隆、三浦大輔ら、中継ぎの島田直也、阿波野秀幸ら投手陣が安定した成績を残した。

 日本シリーズは初戦が雨天中止。第1戦は芝生の濡れ具合などをうまく利用した1番の石井琢朗の頭脳プレーが光った。ボールが湿った芝で勢いが失われると判断し、セーフティーバントを絶妙に決め、チームを勢いづけた。石井琢のバントヒット、盗塁でこのシリーズMVPを獲得した安打製造機・鈴木尚典のタイムリーで先制。西武先発・西口文也からあっさりと得点を奪った。鈴木尚はシリーズ打率.480と猛打を見せ、石井琢は打率.364の大活躍だった。

○阪神 1985年
 
 シーズン中の甲子園球場での巨人戦でランディ・バース、掛布雅之、岡田彰布がバックスクリーン3連発をマークした年。阪神は日本シリーズで、広岡達朗監督率いる西武を4勝2敗で下し、吉田義男監督が宙に舞った。

 なんといっても日本一の立役者はバース。第1戦の8回、西武松沼博から救援した工藤から先制3ラン。第2戦、第3戦でも本塁打を放ち、打率.368、8打点と大活躍した。また、バース、掛布、岡田、真弓明信ら中心選手だけでなく、主に6番打者だった長崎啓二も2戦連発。第6戦では満塁弾を放った。投手ではゲイルが2戦2勝。第6戦では完投勝利を挙げて、優勝に貢献した。

○ヤクルト 2001年

 小さな大打者、若松勉監督が率いた年。リーグ優勝をしたときは初めての栄冠だったため、優勝インタビューで「ファンの皆さま、本当にあの、あの、おめでとうございます」と戸惑いながら言ったコメントが笑いと温かさを呼んだ。現監督の真中満がリードオフマン、名手・宮本慎也が2番・ショート。3番からは稲葉篤紀、ペタジーニ、古田敦也、岩村明憲と続き、7番には現DeNA監督のラミレス、8番は勝負強い土橋勝征と抜け目のない打線だった。

 日本シリーズの相手は梨田昌孝監督(現楽天監督)率いる「いてまえ打線」の近鉄。ローズや中村紀洋ら強打者がそろったが、封じ込んで4勝1敗で日本一。投手陣は左腕・石井一久、最多勝の藤井秀悟、クローザーの高津臣吾が中心だった。また、第4戦の7回で1-1の同点から飛び出した代打・副島孔太の勝ち越しアーチも印象的だった。

○中日 2007年

 レギュラーシーズンは巨人が優勝を果たしたが、クライマックス・シリーズで落合監督の中日が勝ち抜き、2年連続で日本ハムと日本シリーズで対戦。4勝1敗で1954年以来53年ぶりの日本一を達成した。

 語り継がれているのは第5戦。先発した山井大介が8回まで完全試合ペースの投球も、リードした9回、マウンドには岩瀬仁紀が上がった。継投による完全試合。参考記録ではあるが、NPB史上初の出来事だった。オリックスを退団し、育成契約で中日に入団。支配下に這い上がった中村紀洋が主に5番を任され、打率.444でMVPに。お立ち台では涙を流すシーンも見られた。

■パ・リーグでは「シンジラレナーイ」や「史上最大の下剋上」

【パ・リーグ】

○日本ハム 2006年

 北海道で初めて行われた日本シリーズとして注目を浴びた。初戦こそ落としたが、第2戦から4連勝。4勝1敗で日本一になった。前年度5位だったトレイ・ヒルマン監督の「シンジラレナーイ」も名言となり、野球ファンには浸透した。
 
 北海道に移転してからのチームを中心で引っ張ってきた新庄剛志がシーズン途中に引退を表明。チームもファンも一つになった。札幌ドームを満員にすると宣言し、エンターテイメント性も重視。今の日本ハム人気の礎を築いた。シリーズ初戦は中日・川上憲伸、日本ハム・ダルビッシュ有とその後、メジャーを舞台で投げることになる好投手対決。初戦は川上に軍配があかったが、第5戦ではダルビッシュが勝利。川上は敢闘賞。ダルビッシュは優秀選手賞を獲得。MVPには2本塁打7打点の稲葉が輝いた。

◯ソフトバンク 2015年

 記憶に新しい昨年の日本シリーズは工藤公康新監督が豊富な戦力を率いた。ヤクルト真中監督との新人監督対決は、4勝1敗でソフトバンクが日本一に。前年度の秋山幸二監督に続き、2年連続でホークスが日本一となった。

 ソフトバンクは武田翔太、バンデンハーク、摂津正、スタンリッジと強力先発投手陣が勝利。MVPはこの年限りで退団し、メジャー挑戦した李大浩。5試合で16打数8安打2本塁打8打点と大活躍した。一方、ヤクルトではトリプルスリーの山田哲人が第3戦で3打席連続本塁打という偉業を成し遂げたシリーズだった。

○ロッテ 2010年

 セ・リーグを制した中日とリーグ3位からCSで西武、ソフトバンクを破り、勝ち上がったロッテが対戦。ロッテが4勝2敗1分で5年ぶりの日本一に輝き、就任1年目の西村徳文監督が成し遂げた功績は「史上最大の下剋上」と呼ばれた。リーグ優勝の意義を問う声もあったが、ストーリー性があり、語り継がれる日本シリーズになった。

 第6戦は延長15回で勝敗つかず、引き分けに。日本一が決まった第7戦も延長12回で試合が決まるなど熱戦が続いた。下剋上の立役者は今江敏晃だった。1試合4安打をマークした試合もあり、打率.444、6打点と勝負強く、2005年に続いて、2度目の日本シリーズMVP。1年目の清田育宏も初本塁打を含む6打点と活躍した。

■楽天は田中が胴上げ投手、オリックスはイチローの活躍も

○西武 2008年

 4勝3敗で西武が巨人に勝利。西武の黄金期を支えた渡辺久信監督が就任初年度で宙に舞った。

 今やエースとなった西武・岸孝之の大きなカーブが巨人打線を翻弄。第4戦で先発して完封。第6戦では中2日でリリーフ登板し、ピシャリと抑えた。第5戦で巨人クルーンから本塁打を放った平尾博嗣が、2勝3敗で迎えた第6戦も本塁打をマークするなど援護。岸がリリーフでも白星を挙げ、西武が逆王手をかけると、第7戦は西口、石井一、涌井のリレーなどで競り勝った。おかわりくんこと中村剛也ら野手陣も好調で全試合で本塁打を記録するなど投打ががっちりかみあった。
 
○楽天 2013年

 球団創設初の日本シリーズ進出で初制覇を果たした。シーズンではこの年を最後にメジャー移籍した田中将大が24勝0敗という驚異的な数字を記録し、リーグ優勝に輝くと、前年日本一の巨人とシリーズで激突。初の東北開催の日本シリーズを4勝3敗で制した。最後の試合もマー君が締めた。

 開幕戦は田中ではなく、現在の楽天エースの則本昂大。田中は2試合目で登板すると、毎回の12奪三振で9回3安打1失点と好投し、日本シリーズ初勝利を挙げた。第3戦は今シリーズMVPとなる美馬学が6回途中無失点の力投で勝利。3勝2敗で迎えた第6戦。田中で日本一を決める公算だったが、巨人打線に攻略され、2-4で敗戦。3勝3敗で第7戦を迎えた。美馬が6回無失点に抑えると、7回から2イニングを則本、そして9回を田中が抑えてゲームセット。杜の都・仙台は歓喜に包まれた。新規参入から9年目のシーズンだった。

◯オリックス 1996年

 故・仰木彬監督の3度目の日本シリーズ挑戦。4勝1敗で巨人を倒して初めての日本一となった。

 初戦は延長10回。イチローの決勝ソロでオリックスが先勝。第2戦はトロイ・ニールの2点タイムリーを4人の投手が守り切り、2-0で勝利した。第3戦は巨人の先発・ガルベスを攻略。第4戦は落としたが、第5戦は斎藤雅樹を攻略した。MVPはシリーズで3安打ながら、安打が貴重なタイムリーにつながったニールが獲得した。このシリーズではイチロー、田口壮、巨人には松井秀喜といった後のメジャーでプレーする選手が顔をそろえた。松井は本塁打ゼロだった。

 12球団すべて、日本一になった時のシリーズにはいくつもの名勝負、名場面が誕生している。タレント揃いの広島と日本ハムの戦いも、記憶に残るドラマが刻まれることだろう。

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