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プロ野球

オリ福田、出塁率に価値求める 打ちにいかない打撃を意識

 オリックスの次世代スターを発掘する当コラム。第21回は福田周平内野手を取り上げる。

45試合連続で出塁を記録したオリックス・福田(撮影・西海健太郎)

 8月11日の楽天戦で、福田の連続出塁記録がついに45試合で止まった。6月12日の中日戦から続いていたもので、およそ2カ月間、塁上で福田を見ない日はなかったわけだ。正直、もう少し続いてほしかったので残念と思ったが、本人は「こんなもんですよ」と、意外にもさばさばした表情だった。

 45試合は16年の西川(日本ハム)に並ぶパ・リーグ8位タイ。十分に素晴らしい記録だ。だが、イチローの持つ歴代1位の69試合にどこまで迫るのか、と私には毎日、緊張感があった。一方で本人は冷静で「もうすぐ止まりますよ」と話していた。「今の僕の心技体では成し遂げてはいけないものです。もっと技術的にもメンタル的にも成長しないといけない。イチローさんはそんなに簡単に抜けるものではない」。現時点でのイチローとの差を、肌で感じていたのだろう。それは言い換えれば、彼の目標がかなり高いところにある、という証明だったかもしれない。

 福田周平、27歳。広陵から明大、NTT東日本を経て、18年にオリックスに入団。そして今季、2年目ながらも新キャプテンに就任した。強豪チームばかりを経由した野球エリートのように見えるが、この経歴の中に大きなターニングポイントがある。社会人2年目の秋。ドラフト会議で実は指名漏れしているのだ。

 「絶対にプロに行きたいと思っていたんですが、指名漏れして。僕は野手で、しかも身長(1メートル67)も小さいので、3年目以降で指名される確率は2、3%だと思った。もう、強烈なインパクトを残すしかない、と思いました」

 指名漏れしたその瞬間から、福田は意識を変えた。「ロングスイング。振りが大きかった」という打撃を「ショートスイング。コンパクトに振ること」に改良。イメージは打率や出塁率の向上だ。翌年の17年、都市対抗野球では打率5割を超える活躍でチームの優勝に貢献し、橋戸賞(MVP)を獲得。ところが、後日談で「賞があるなんて、知らなかった」と振り返ったほど、目標は賞ではなく、あくまでもプロ入りだった。彼の原点でもある。

 「打率3割で出塁率3割5分だったら、打率2割5分で出塁率4割の方が僕にとっては価値がある。いかに、ボールの見極めができるか。四球を狙いにいっても四球は取れないです。タイミングをしっかりと合わせて、打つ姿勢がないと、投手は投げにくくないし、四球は取れない。そのためには打つ技術も高めないといけないんです」

 今季は出塁率4割を目標にスタートした。8月11日の時点で、出塁率は・363。デスパイネと並びリーグ12位だ。目標まではあと少しだが、それでも立派な成績だ。打撃が向上しているのは間違いないだろう。打撃のテーマについて聞くと「打ちにいかないことを意識しています」と言う。打ちにいかない打撃とは――。

 「ボールは必ずベース板に来る。しっかり待てていないと、低めの変化球に手が出てしまう。そのためにも、打席に入る前に気持ちを落とします。欲が出てしまうと、ボール本来の形ではなくなる。速く感じたり、変化球がより曲がったように感じる」

 打席では力まずにリラックスして無心、無欲で待つ。言葉にすると簡単だが、かなり難しいのではないか。本人も「まだまだ」と納得はしていない。彼の打撃論の1つに「詰まるのが僕の打球」というものがある。詰まって、外野手の前に落ちるのが、良い打球なのだ。そのため打撃練習では重心の確認や、逆方向への意識など、自分なりのチェックポイントに時間を費やしている。

 さらに彼を高めているのが、イメージトレーニング。就寝前には投手の映像や前回の対戦などを見返して、頭の中で打席に立つ。「前回は、こうやられたな、とか。映像を見て、こういう軌道で来るな、とか。だから初めての投手でも、初めてではない感覚になる。以前に対戦したことがあるような。そういう境地なら、有利に進むので」。そして、こう続けたことに思わずハッとした。

 「極端な話をすると、ケガで1年間、打撃ができなくても、イメトレを繰り返せば、打撃を磨くことができると思っています。僕の今までの野球人生で、イメトレはすごく大事なものです」

 実際にボールを打たないと打撃は磨けない。そんな素人考えの私は否定された。彼の考えからすれば、そんな窮地さえも窮地ではなくなるのだ。

 想像をふくらませた福田は、最後にこう、つぶやいた。

 「昔の侍って、どうだったんですかね。力んで刀を持ったら、うまく斬れなかったんじゃないですか。境地に達した人は、力を入れることが強いことだとは思わなかったのでは」

 生きるか死ぬかの戦いに明け暮れた侍が、ガチガチに力んで刀を振り回していたら、やられていただろう。やはり脱力し、無心、無欲で敵と対峙(じ)したものだけが「究極の境地」に達したのかもしれない。「僕は、まだまだ全然甘いです。欲が出てしまう。塁に出たい気持ちが先行して、ボール球に手を出したりする」。今回の45試合連続出塁も、納得するまでには至らなかった。「現状の僕では70試合は無理でした。来年以降、チャンスがあれば狙いたいです」。端正な顔立ちとは、似つかわしくない鋭い目つきだった。いつか、本気で金字塔を狙っている。そんな侍の目だと感じた。(鶴崎 唯史、当コラムはスポニチホームページで不定期連載中)