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プロ野球

昨年引退したベースボール犬「わさび」 11年間の活動で“大切にしてきたこと”

 昨年10月、14歳で引退した柴犬初のベースボール犬「わさび」が、本になって帰ってきた。

講談社・青い鳥文庫の「ほんとうにあった犬の話 ワン!ダフルストーリーズ」

 3歳でデビューし、それから11年間。わさびは独立リーグやNPBなど実に50試合にわたって、始球式でマウンドにボールを運ぶなどの「お仕事」を続けてきた。

 そんなわさびの物語が掲載されているのは「ほんとうにあった犬の話 ワン!ダフルストーリーズ」(講談社・青い鳥文庫)。そのデビューから引退まで。マネジャーの三沢治美さんは、「初めて失敗をしたスランプの時やオールスターの大舞台を通して、私とわさびがどのように互いを思いながらボールを運んだか。11年間の活動を通じて“大切にしてきたこと”について書いてあります」と話した。

 治美さんの父は元日本ハムの選手で、引退後は編成部長なども歴任した三沢今朝治さん。現在はBCリーグ・信濃の会長を務めている。「お客さんに喜んでもらえる独自の企画を」と家族に相談したところ、治美さんの提案でベースボール犬・わさびが誕生したという。

 デビューは08年5月3日の信濃―石川戦。柴犬は物を運んだりするのは不向きの犬種とされていたが、わさびは見事に成功させ、スタンドのファンから大きな拍手を浴びた。本ではそんなシーンが克明に描写されている。デビュー3年目にはスランプに陥り、約3カ月ボールを運べなくなったこともあった。

 そして13年、福島・いわきグリーンスタジアムでの球宴でボールを運んだ晴れ舞台などを経て、昨年の引退へ…。治美さんはどんな時も、人の幸せが犬の我慢や犠牲の上に成り立ってはいけない。犬の意思、気持ちをいかに大切にするかが重要――。そんな思いでわさびと接してきたという。

 相手を思い、大切にすること。それは人間同士、そして人間と犬の関係でも同じだ。

 記者も13年の球宴などで、わさびの愛らしい姿を何度も実際に見たことがある。笑顔を運ぶベースボール犬。またいつか、どこかで会えたらな…。そう思いながら、読み終えた本を閉じた。(記者コラム・鈴木 勝巳)