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2019.07.26 12:00
阪神「死のロード」の歴史と現在、新たなハンデを背負う球団は?【NISSAN BASEBALL LAB】
今年も夏がやってきた。野球界では毎年、高校球児たちによる熱戦が繰り広げられるが、その舞台である甲子園球場を本拠地とする阪神は、「死のロード」と言われる3週間以上の長期遠征を強いられることになる。
開幕から疲労が蓄積し、梅雨の時期にも体力を消耗した上で迎える夏本番。30度を優に超える気温が続く中、1カ月近く地元から離れてホテル住まいが続き、選手たちの疲労度はピークに達する。過去、阪神はこの時期に大きく負け越して優勝争いから脱落することが多く、特に1980年代以降に「死のロード」と呼ばれるようになった。
■20年で4度、泥沼の12連敗も…
実際に「死のロード」期間のチーム成績を見てみたい。1980年からの20年間の成績(表1)を見ると、1980年代初頭は負け越しつつも勝率5割付近をキープしたが、1984年はロード後半に8連敗を喫して4勝13敗。21年ぶりのリーグ優勝&2リーグ制後初の日本一に輝いた1985年は7勝7敗で乗り越えたが、翌年以降は再び黒星が先行した。
トータルで見ると、1980年から1999年の20年間で、長期ロードを勝ち越したのは4度のみ。ヤクルトと優勝争いを繰り広げた1992年に長期ロードを10勝6敗の勝率6割越えを記録したが、それ以外はほぼ負け越し。1998年は遠征初戦から泥沼の12連敗を喫し、まさに「死のロード」だった。
■6年連続で勝率5割以上、もはや「死語」…
1990年代の暗黒期を引きずった2000年代も、しばらくは「死のロード」に苦しんだ。18年ぶりにリーグ優勝した2003年でさえ、4勝11敗と大きく負け越したのだ。だが、2004年以降の15年間で負け越したのは4度のみ。2013年からは6年連続で長期ロード勝率5割以上のシーズンが続いている(表2)。
理由はいくつかある。1997年に大阪ドーム(現京セラドーム大阪)が完成し、阪神がこの時期に主催試合として使用。近年は2カード分が組まれることが多く、その時は自宅に帰ることができる。さらに、昔に比べると交通機関が発達し、宿舎などを含めた環境面も改善・向上。
長期ロード期間中も「快適な」日々を過ごすことができるようになった。「言葉の呪縛からも近年の好成績で解き放ち、「死のロード」は、もはや「死語」と言ってもいい。
■阪神よりも「死のロード」と言える球団は?
このように京セラドーム大阪の恩恵を受けている阪神だが、それは立地だけでなく、空調の効いたドーム球場であることも大きい。酷暑の8月、体力の消耗度を考えると、移動よりも屋外球場でのダメージが大きいだろう。
その観点も踏まえて今季の8月の試合日程を見ると、阪神は京セラドーム大阪で6試合を行うほか、東京ドームとナゴヤドームで3試合ずつを実施。8月の27試合中12試合をドーム球場で行う予定となっている。この日程だと、暑さのダメージを軽減し、体力の消耗を防ぐことできるはずだ。(表3&表4&表5)
そして、この阪神以上に「涼しい夏」を過ごせるのが、読売巨人である。本拠地・東京ドームで13試合が組まれている他、ナゴヤドームでも6試合を実施予定。昨季も27試合中16試合がドーム球場だったが、今季は27試合中19試合とさらに恵まれた日程となっている。
一方、酷暑の影響をモロに受けそうなのが、横浜DeNAと東京ヤクルトの2球団。横浜DeNAは27試合中21試合が屋外球場。東京ヤクルトはさらに1試合多く、27試合中22試合が屋外球場となった。この2チームは昨季も同等の数の屋外球場試合(横浜DeNAが22試合、東京ヤクルトが21試合)が組まれており、「慣れている」という面はあるが、他チームと比べると大きなハンデとなり得る。昨季との比較で「楽」になったのは広島東洋。昨季はドーム球場6試合のみで屋外球場21試合だったが、今季はドーム球場10試合、屋外球場17試合と少し“マシ”になった。
この8月の日程が、ペナントレースにどう影響するか。「死のロード」に変わる「死の8月」。屋外球場での試合が多く組まれているチームほど、「冷夏」となることを強く望んでいるはずだ。