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高校野球

193cmから148km/hの豪速球!“投手”金成麗生(日大三)にMLBスカウトも高評価

★「投手としての将来性感じる」(MLBスカウト)

日大三17-18早稲田実。延長12回で両軍合わせ36安打7本塁打が飛び交った大乱打戦の中で、異彩を放ったのが公式戦のマウンドに初めて上がった金成麗生(かなり・れお/日大三)だ。

8回裏、田口仁平が清宮幸太郎にライトスタンド上段に飛び込む特大弾を浴びると、ファーストのポジションからマウンドに上がった金成。身長193cmの体格をダイナミックに使い投球練習を始めると2万人が集ったスタンドから、どよめきが起きる。

そして、初球にカーブを挟んだ後に豪速球を連発していき、それまで4安打2本塁打5打点を挙げていた4番・野村大樹を空振り三振に斬って取った。その後3四死球を与えたが、8番・石井豪をピッチャーフライに打ち取り無失点に抑えた。これが9回表に7点を奪う大逆転、その後の大激戦の演出にひと役買ったと言っても過言ではない。

9回は球がバラつき、先頭打者に四球を与え、続く打者にも1ボールを与えたところで降板したが、そのインパクトは大きかった。

「腕の振りも良いですし、将来性は打者よりも投手ですね」

MLBアストロズの大慈彌功スカウトは、自身のスピードガンで148km/hを計測した逸材の将来性を高く評価した。また、打者では弱点となりかねない金成の走力も「上手投げの投手なら関係ありませんから」と話した。

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★内野手の経験もプラスに

中学時代の相模ボーイズで投手だった金成だったが、当時から制球力がなく守備も決して上手くはなかったため、高校2年夏からは投手を封印し一塁手に専念していた。そして、昨秋の早稲田実との決勝戦で5打数4安打5打点1本塁打を放つなどの活躍でプロ注目のスラッガーとなっていた。

だが、この日投手としても見せた大器の片鱗には多くの人を驚かせた。最も驚いているかもしれないのが金成本人だ。

「投げられたことは嬉しかったです。148km/hは自分でも球速表示が見えて、驚きました」

その要因には一塁手を経験したことも大きかった。センバツ甲子園前に「内野ノックを受けることで、下半身を使うようになりました。上半身と下半身のバランスが良くなって、それが投球にも良い結果になっています」と、“投手・金成”を評価していた小倉全由監督は、この日の投球を振り返り「投手としてまとまってきましたね」と今後の投手起用も示唆した。

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「4番なのに1安打しか打てず、9回もリードを守りきれず申し訳ない気持ちでいっぱいです」と終始反省の言葉を並べた金成だったが、インタビューの最後には、今夏とチームへの思いをよりいっそう強くしたと語った。

「1イニング投げただけでも、だいぶ疲れがあります。(エースの)桜井は普段こんなに大変な思いをしているのかと思いました。桜井をもっとフォローができればチーム力も上がると感じました」

高校通算23本塁打のスラッガーという点だけではなく、投手としても高い潜在能力を見せた金成。大観衆と宿敵の前で積んだ貴重な経験をどのように生かすのか。今後の金成にも目が離せなさそうだ。

文・写真=高木遊