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甲子園でのタイブレーク導入議論 球児の将来の夢絶たない方策とは

 試合の早期決着を促すタイブレークを甲子園で導入する気運が高まってきている。日本高野連の竹中雅彦事務局長は、19日に開いた運営委員会で「かなり風向きが変わってきた」と発言した。

選抜大会滋賀学園戦で15回を1人で投げきった福岡大大濠・三浦

 実際に今春のセンバツを取材していても各校の監督の発言からも投手の酷使に対する意識が変わってきていると感じる。福岡大大濠のエース右腕・三浦は3月22日の1回戦・創志学園戦、2回戦の滋賀学園戦では延長15回引き分け試合となった3月26日の試合と再試合の同28日の試合を含めた計3試合、7日間で475球を投じた。決勝に進めば4連戦となるだけに、八木啓伸監督は翌29日の準々決勝・報徳学園戦ではエース右腕を先発から外すどころか、試合中の投球練習すら控えさせた。試合は3―8で敗れたが「優勝するためには空けるのはここしかない。迷わなかった」と言った。高崎健康福祉大高崎の青柳博文監督も複数投手制を敷き、選手の健康管理はトレーナーの意見を参考にして選手起用を決めているという。

 記者の智弁和歌山時代の同期で、00年夏の甲子園優勝投手となった山野純平さんは現在、和歌山市内で理学療法士として働いている。甲子園優勝投手、理学療法士の両方の顔を持つ山野さんは、タイブレーク導入の機運が高まっていることについて「投手の負担が減ることには賛成」と話す。当時の智弁和歌山は大会新記録となった大会通算(6試合)100安打、11本塁打の打線のイメージが強いが、投手陣は山野、中家の2枚看板を軸に複数投手で勝ち上がった。しゃく熱の夏の甲子園。複数投手制で勝ち上がっても「相当しんどかった。1人で投げ切ることは想像できない」と振り返る。その上で「将来がある高校生がケガで野球を断念してほしくない」と願う。

 解決策として山野さんは「WBCのように球数制限を導入したり、投球回数に制限があればいいんじゃないか。休養日が入るだけでも全然違う」と話す。その一方で、大学、社会人、プロと次のステージで野球を続ける選手もいれば、高校で本格的な野球が最後という選手もいるのも確かで「それぞれの選手の立場があるので難しい」という。選手層が厚い強豪校なら複数投手制を敷けても、選手層の薄い高校では1人のエースに頼らざるを得ないのも球数や投球回数を制限する上での問題点となる。そういう面があるからこそ、竹中事務局長の「何か(対策を)打たないといけないとなると、タイブレークなのかな」という発言なのだと思う。

 本紙で79年から06年までコラム「甲子園の詩」を連載した作家の故・阿久悠氏は、智弁和歌山が優勝した00年8月22日付の紙面で「高校野球はもしかしたら二十世紀の偉大な発明かもしれない」と書いた。「人間の祭典として完成品が競い合う場でなく未完成品が未熟を超えて人々に夢や感動を与えるのだから。これは世界にも類を見ない素晴らしい発明だ」。完成品になる過程の高校野球で将来の夢を絶ってほしくない。山野さんは高齢者らのリハビリを担当しつつ、理学療法士として高校球児のサポートができる日を夢見ている。(記者コラム・東尾洋樹)