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“ボトム3”は禁物!?交流戦がペナントレース全体に与える影響【NISSAN BASEBALL LAB】

広島カーブの菊池涼介選手がバットを振っている所

写真提供:共同通信社

■圧倒的なパ・リーグ優勢の歴史の中で

 梅雨入りを迎えた中でも絶賛展開中なのが、今年で15年目を迎えているプロ野球の日本生命セ・パ交流戦である。

 異なるリーグの相手と戦う約3週間(かつては1カ月)。これまで試合数などの方式を変えながら実施されてきたが、この交流戦という特別な期間がペナントレース全体に与える影響は、15年前から変わっていない。全体からすると短い期間ではあるが、その日数以上に非常に重要な戦いであると言えるだろう。

 これまでの戦いを振り返ると、「パ強セ弱」であることは周知の通りである。昨年までの過去14年間で、パ・リーグが勝ち越したのは1度(2009年)のみ。通算でセ・リーグの920勝に対して、パ・リーグは1044勝(56分け)となっている。

 そして球団別の交流戦通算成績(表1)を見ると、最も勝率が高いのがソフトバンクで、203勝121敗12分けで唯一の勝率6割超え。優勝(勝率1位)回数7回、勝ち越し回数12回も12球団でトップの成績を残している。

2005~18年までの交流戦通算成績(表1)

 今季もこれまでの流れを踏襲している。6月12日終了時点で勝ち越しているのは、勝率順に日本ハム(6勝2敗)、ソフトバンク(5勝2敗1分け)、巨人(5勝3敗)、DeNA(5勝3敗)、楽天(5勝3敗)、阪神(4勝3敗1分け)の6球団。
 
 日本ハム、ソフトバンクの相変わらずの強さと、交流戦通算最下位に沈むDeNAの奮闘ぶり、リーグ戦からの好調を維持する楽天の戦いなどが目に付く一方で、リーグ戦では首位を走りながら交流戦ではカード頭3連敗を喫し、ここまで2勝6敗という広島の“つまずき”が気になるところだ。

■交流戦優勝とペナントレース制覇の関連性

 これまでも、交流戦での“貯金”と“つまずき”が、その後のリーグ戦の戦い、そしてペナントレース全体に大きな影響を与えてきた。
 
 「交流戦を制するものは、ペナントレースを制す」というような言葉もあるが、実際に交流戦順位とリーグ優勝球団(表2)を見て分かるように、14年間で交流戦優勝(勝率1位)のチームがリーグ優勝を果たしたのは計7度。実に交流戦で優勝したチームの半分が、その勢いのままにゴールテープを切ったのだ。

交流戦順位とリーグ優勝球団(表2)

 セ・パ両リーグの優勝チームの視点から見ても、交流戦の重要性が浮き彫りになる。2005年以降の14年間のセ・パ両リーグを優勝した28チーム中、交流戦でも優勝したのは前述した通り7チーム(25%)で、交流戦2位以内となると12チーム(約43%)に増える。

 さらに交流戦のAクラス(上位6位以内)に条件を広げると、実に23チーム(約82%)に上る。昨季のセ・リーグ覇者の広島は交流戦7勝11敗の10位だったが、これはあくまで例外的だ。

■交流戦の上位3チーム&下位3チームの最終成績は?

 優勝チームだけではない。ペナントレースの最終順位をAクラスとBクラスに分けたとき、その2グループと交流戦順位が見事なほどにリンクする(表3)。

 交流戦の上位3チームを見ると、14年間の上位3チーム=42チーム中、最終順位でAクラス入りしたのは31チーム(約74%)。今季と同じ18試合制となって以降の順位を見ても、12チーム中9チーム(約75%)が最終順位でもAクラス入りを果たしている。交流戦で3位以内に入れば、「8割近い確率でCSに進出できる」ということになるのだ。

交流戦順位とA クラスorBクラス(表3)

 逆の場合も然り。過去14年間で、交流戦で10位以下だったチームが、最終的にAクラス入りしたのは42チーム中9チームのみ(約21%)。交流戦でボトム3に沈めば、そこからの巻き返しは難しく、約79%の確率でリーグ戦でもBクラスに沈む。そして交流戦最下位だった14チーム中8チームがペナントレースでも最下位という結果に終わっている。

■広島のリーグ4連覇に黄信号!?

 それを踏まえて今季の交流戦を見ると、6月12日終了時点で、上位3チームは日本ハム、ソフトバンク、巨人、そして下位3チームはヤクルト、広島、ロッテ。まだ10試合(もしくは11試合)を残している段階ではあるが、過去のデータを照らし合わせると日本ハムとソフトバンクのAクラス入りの確率は非常に高く、その反対に広島のリーグ4連覇に黄信号が灯っていると言える。

 もちろん広島には、交流戦で10位に沈みながらリーグ戦再開後の快進撃でリーグ3連覇を果たした昨季の例がある。だが、その前の2016年、2017年はともに交流戦トップ3入りからのリーグ優勝であり、交流戦の戦いで勢いに乗ってのペナントレース制覇だった。

 「去年も10位だったから…」、「まだセ・リーグ内の順位は1位だから…」とあぐらをかいていれば、すぐに足元をすくわれることになる。

 それは他の球団も同じ。普段は戦わない相手、普段は訪れない球場で“お祭り”の雰囲気もある交流戦だが、決して軽んじてはならない。そのことは、選手たちも重々、承知している。我々も、残り半分の交流戦を、背筋を正して見なければならない。