BASEBALL GATE

プロ野球

セ覇権争い。やはり広島か、それとも巨人か。データから分かる両者の“違い”と今後のカギ【NISSAN BASEBALL LAB】

セ覇権争い。やはり広島か、それとも巨人か。データから分かる両者の“違い”と今後のカギ

写真提供=共同通信

■劇的に変わった5月の戦い

 開幕から2カ月が経過した。セ・リーグでは、開幕から巨人が好スタートを切ったが、5月に入って広島が怒涛の追い上げを見せて“奪首”に成功。阪神の奮闘も光っているが、6月4日から始まるセ・パ交流戦を前に、開幕前から予想されていた「広島vs巨人」の優勝争いの図式が改めて見えてきた。

 劇的に変わったのが、広島の戦いぶりだった。1番に野間峻祥を起き、3番・バティスタ、5番・西川龍馬と組み替えた打線が面白いように噛み合い、投手陣も大瀬良大地、床田寛樹、野村祐輔の3人に、先発転向のアドゥワ誠、復調したジョンソンが加わり、中継ぎでは左腕・レグナルドが抜群の安定感を披露。

 3・4月にリーグ最多の25失策を記録した守備も、5月は12失策と本来の堅守を取り戻した。その結果、3・4月は27試合で12勝15敗の勝率.444だったが、5月は23試合時点で18勝4敗1分の勝率.818を記録した。

セリーグのチーム投手成績(表1)

セリーグのチーム打撃成績(表2)

 投打別のチーム成績(表1&表2)を見ても、広島の変貌ぶりは明らかだ。チーム防御率は3.68から2.53へ、チーム打率は.225から.287へ劇的に向上。得点圏被打率および得点圏打率の変化も大きく、それがそのまま快進撃に繋がった。

 その一方で巨人は停滞した。打線は5月に入っても好調をキープしたが、投手陣が崩れる場面が目立ち、3・4月は26試合で16勝10敗の勝率.640を誇ったが、5月は21試合で9勝11敗1分の勝率.450。5月29日の阪神戦でサヨナラ負けを喫して3位転落となった。

■エースと4番のパフォーマンス

 選手個々を見ると、ここまでの戦いの中で明暗が分かれているのが、両チームのエースである(表3)。

両チームのエース(大瀬良、菅野)の今季全登板成績(表3)

 広島の大瀬良大地は、開幕2戦目、3戦目と連敗したが、4月25日の中日戦で完封勝ちを収めると5月は3勝0敗。監督が不在だった5月22日の中日戦でも力強い投球で9回を3安打1失点の完投勝劇。心身ともに充実した状態で、勝利数(リーグ1位タイ)、防御率(リーグ2位)、奪三振数(リーグ1位)と投手三冠が目前という好成績を収めている。

 一方、昨季の投手三冠、2年連続沢村賞の巨人・菅野智之は、4月こそ3勝をマークしたが、4月25日のヤクルト戦で7失点を喫すると、5月15日の阪神戦では自己ワーストの10失点の大炎上。

 リーグワーストの13被本塁打で防御率4.38。5月21日に腰の違和感を理由に1軍登録を抹消された。「5勝」は大瀬良と同じだが、その内容は大きく異なったものになっている。

 同じく、4番打者の働きにも“違い”が出た(表4)。

両チームの4番打者(鈴木、岡本)の月別&直接対決成績(表4)

 広島の鈴木誠也は5月に入って打率.398で8本塁打、22打点をマーク。打線の組み替え、周りの打者が調子を上げたことも大きかったが、その中でも4番として存在感を発揮し、貢献度も非常に高い。特に巨人との直接対決では、11試合で5本塁打を放ち、対戦打率.514という圧倒的なパフォーマンスを披露している。

 対する岡本も、3・4月は計7本塁打を放つなど大いに目立ったが、5月は2本塁打と大人しく、昨季は打率.309を残したアベレージも2割台中盤と物足りない。さらに今季の広島戦では率.208と仕事をさせてもらえなかった。打倒カープのためには、岡本の奮起が必要不可欠になる。

■投の広島、打の巨人

 チーム全体を見ると、両チームの今季の戦い方、チームカラー、さらに課題がよく分かる。

チーム防御率:通算_先発_教授(表5)

 チーム防御率(表5)を見ると、リーグ内でも広島が断トツの安定ぶり。その中でも救援防御率2.81とリリーフ陣の出来が出色で、ここまでフランスアが25試合で防御率3.20、レグナルドが21試合で防御率0.37、一岡竜司が19試合で防御率2.00、菊池保則が15試合で防御率3.00、中村恭平が10試合で防御率1.46。

 そして守護神の中﨑翔太が22試合で8セーブを挙げて防御率2.49。この鉄壁のリリーフ陣があってこその5月の快進撃だっただろう。

 対する巨人は、エース・菅野の不調が大きな誤算ではるが、それ以上に救援防御率4.14のリリーフ陣の出来が悪い。

 中川皓太が21試合で防御率0.39、戸根千明が20試合で防御率1.98、田原誠次が14試合で防御率2.89、高木京介も14試合で防御率2.45と奮闘している投手はいるが、守護神候補のクックが4月下旬に右肘違和感で登録抹消となると、勝ちパターンを確立できないまま救援防御率がリーグ唯一の4点台と崩壊状態。

 ここの数字を改善できない限り、巨人の巻き返しはないだろう。

チーム打撃成績:打率_本塁打_平均得点(表6)

 巨人の強みは打線にある。チーム打撃成績(表6)を見ても、チーム打率、本塁打数、平均得点とリーグトップを誇っており、広島と比べてもまだまだ大きく差を付けている。打線の破壊力では巨人の方が間違いなく上なのだ。

 このストロングポイントを生かせるかどうか。今季の直接対決は、ここまで11試合で4勝6敗1分。7勝18敗(2017年)、7勝17敗1分(2018年)と2年連続で大きく負け越している広島戦での戦いで優位に立てれば、まだまだ優勝の本命の位置に着座することができるはずだ。

■今後の行方を大きく左右する交流戦

 このまま広島が早期の独走態勢に入るのか。それとも巨人が食らい付き、再び首位の座を奪い返すのか。その大きなカギを握るのが、6月4日に開幕するセ・パ交流戦である。

過去4年、広島の交流戦成績_チーム別勝敗表(表7)

過去4年、巨人の交流戦成績_チーム別勝敗表(表8)

 今季も3回戦制で行われるが、現行と同じ方式となった2015年以降の戦いを振り返ると、広島(表7)が4年間で通算39勝32敗1分けと勝ち越している一方、巨人(表8)は30勝42敗と黒星が先行している。

 まずは同一カードで3連敗をしないこと。第1戦か第2戦で確実に1つは取ること。その上で1カードでも3タテできれば勝率5割以上は確定する。例年パ・リーグ優勢が続いており、今季もそれに倣えば、白星を先行させたセ・リーグ球団は、交流戦期間中に一気に順位を上げることが可能になるはずだ。

 広島か巨人か。それとも阪神を筆頭とした他球団なのか。6月にまた潮目が変わるのか。少なくとも、今後も広島と巨人を中心にセ・リーグの覇権争いが繰り広げられることは間違いない。

※成績はすべて5月29日終了時点

データ協力:データスタジアム
文=三和直樹