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プロ野球

0ボール2ストライク時の配球から分かるもの

 0ボール2ストライク。圧倒的に投手有利なこのカウントでは、ボールゾーンへ1球外すのが定石とされている。仮に見逃がされても投手有利は揺るがず、打者が手を出してくれればもうけもの。さらに、決め球への布石にもなり得るというのが主な理由だろう。一方で、明らかなボール球でボールカウントをひとつ献上するのは無意味という見方もある。本稿では、この0-2カウントからの配球について、迫っていきたい。

 まずプロ野球において、0ボール2ストライクからボール球がどれくらいの割合で投げられているかを探っていく。2016年に投手がボールゾーンへ投球した割合をカウント別に見ていくと、0-2では77.5%とすべてのカウントで最も頻度が高かった(表1)。近年を振り返ってもこの傾向はほぼ変わらず、やはり0-2ではボール球を投じるケースが圧倒的に多い。

 次に、この誘いに対する打者のアプローチを探るため、2ストライク時のスイング率を調べてみた。すると、0-2のカウントではストライク、ボールゾーンともにその他のカウントと比較しても明らかに低くなっている(表2)。全体的にスイング自体をされていないことから、バッター側もボール球が来ることはある程度織り込み済みのようだ。

 以上を踏まえ、0-2からの3球目をボールゾーンで捕球した頻度が高かった捕手の面々を見ていこう(表3)。2位以下を大きく引き離していたのは山崎勝己(オリックス)。同状況で要求した144球のうち、実に135球がボールになった。また3位に伊藤光(オリックス)、4位に若月健矢(オリックス)がそれぞれランクインしていることから、チーム方針が関係している可能性もある。

 一方、逆に最も割合が低かった順に並べたのが(表4)だ。最もボール球が少なかったのが高城俊人(DeNA)で、ストライクゾーンに投げ込まれた割合は実に山崎の5倍以上となっていた。

 全体的に打者がスイングしない0-2というカウントにおいて、ボール球の数が対照的だった山崎と高城。この両捕手の配球で打者の反応を見ていくと、ボールゾーン被スイング率では如実に違いが表れていた。同状況ではボール球の変化球を要求することが多い山崎だが、被スイング率では28.0%と平均未満。ボールゾーンへのストレートに至っては、ほぼスイングされていなかった。0-2のカウントでは「1球外す」という傾向を、打者側にもある程度読まれているのかもしれない。一方、3球勝負が多い捕手と考えても良い高城はストレート、変化球ともに平均よりもスイングされていた。対象を“3球目”に限定すると、ボール一辺倒の配球よりもある程度ストライクを交えた方が効果的といえそうだ。

 最後に捕手・山崎と高城の0-2からの3球目をプロットしたものが表6になる。山崎と高城の配球に大きな差があることは一目瞭然だろう。0-2から1球外したことが有効に働き、打者を打ち取ることもあれば、大胆に3球勝負に行った結果、痛打を浴びることも往々にしてある。しかし、もしバッテリーが漫然とセオリーにのっとり、機械的にボールゾーンへ外しているだけというならば、その配球には大いに再考の余地があるだろう。今後は投手が2球で追い込んだ際の、捕手の構えにも注目したいところだ。

※データはすべて2016年シーズン終了時点

文:データスタジアム