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侍ジャパン

悔し涙の金メダルから嬉し涙の金メダルへ 善波JAPAN再始動!(侍ジャパン大学代表選考合宿)

合宿スタートから厳密なドーピング検査を行うユニバーシアードに向け、説明を受ける選手たち。

横井人輝監督(東海大前監督)の辞任に伴い空位となった侍ジャパン大学代表の監督に善波達也監督(明治大)が再就任。3月21日から代表選考合宿が始まった。
 善波監督が同代表を率いるのは2013年から2015年に務めて以来。今年の8月に行われるユニバーシアード競技大会(台湾・台北)では2大会連続の金メダルと2年前の雪辱がかかっている。

★無情の結末から2年

 2015年7月11日、台湾との決勝戦の会場となった光州起亜チャンピオンズフィールドに降りしきる雨により、決勝戦は降雨中止に。予備日も用意されていなかったため、単独金メダルを目指していた侍ジャパン大学代表にとっては、無念の両国金メダルとなった。
「この仲間たちと戦えて嬉しかったです。2年後のユニバーシアードでは、この悔しさを晴らして欲しいです」
 当時主将だった坂本誠志郎捕手(明治大/現阪神)は涙ながらに声を絞り出し、雪辱を後輩たちに託した。
 善波達也監督のもとで代表選手に選ばれた代表22選手は、現在プロ野球でプレーする選手が14人(うちドラフト1位指名6人)を数えるほどの強力な布陣で他国を圧倒。予選リーグ3試合と準決勝で合計35得点無失点と、着実な戦いぶりで決勝戦に駒を進めた。

 結果だけを見ると、楽な試合展開が多かったように思えるが、そうではなかった。開幕戦の韓国戦や準決勝のアメリカ戦は、1つ転べばまったく違った展開になっていた可能性も大いにあった試合で、格下とはいえ中国戦やフランス戦は激しい雨の中で行われる試合だった。
 そんな中、光ったのが投手力と守備力、そして走塁への高い意識だ。
投手陣では韓国戦とアメリカ戦とも先発した柳裕也投手(明治大/現中日)が2試合10回2/3を投げ無失点で試合をしっかりと作るなど、全投手が持ち味を発揮しチームに流れを引き寄せた。
 守備では、遊撃手を務めた柴田竜拓内野手(国学院大/現DeNA)を中心に激しい雨と天然芝という環境にも落ち着いた守備を見せ、投手陣を支えた。走塁面では、チームとして徹底してきた全力疾走と次の塁を狙う姿勢を北村祥治内野手(亜細亜大/現トヨタ自動車)らが見せ、相手守備陣のミスを誘発した。
 そして快勝が続く中でも、選手村では毎朝、毎晩素振りやトレーニングを行う選手が多くおり、「こちらから何も言わずとも、自然とそうした雰囲気が醸成されていた」と善波監督は目を細めていた。

 そんな最高のチームで満を持して迎えた決勝戦。侍ジャパン大学代表の先発は、これまで1イニングのみの登板に温存できていたエース・田中正義投手(創価大/現ソフトバンク)。相手の台湾も元阪神投手の郭李建夫監督が率い、大会前にアメリカ遠征もするなど万全の状態に仕上げてきており、相手にとって不足はなかった。
 だが、その大一番は幕が開くことなく終わった。3位決定戦が行われた日中まではなんとか天気も持ちこたえていたが、夕方から豪雨と小雨を行ったり来たりしながら雨は降り続いた。それでも選手たちは、ベンチや室内練習場で素振りなどウォーミングアップを欠かさずに天気の回復を待ったが、試合開始の予定時刻から2時間が経った21時すぎ、決勝戦の中止が決定。
 予備日も用意されていなかったため、両国金メダルとなった。台湾は喜びを爆発させていたが、侍ジャパン大学代表ベンチは悔し涙を流す者もいるなど重苦しい空気に包まれた。
 善波達也監督も目に涙を浮かべ、「選手・スタッフが一体となって、今日ここで勝つためにやってきたので悔しいです。決勝を戦わせてあげたかったです」と悔しさを隠しきれなかった。
 それから2年。当時を知る選手はユニバーシアード一次登録メンバーの中では下石涼太内野手(東海大)のみだが、当時コーチだった横井前監督や昨年の主将を務めた柳ら選手たちが、その魂を昨年の代表にも継承し今がある。
 
 雨によって流れた悔し涙を嬉し涙に変えるため、善波監督が率いる侍ジャパン大学代表の戦いが始まった。

コーチ、選考委員と談笑する善波達也監督(写真右)

◎2015年ユニバーシアード代表選手
【投手】上原健太(明治大/現日本ハム)、濱口遥大(神奈川大/現DeNA)、柳裕也(明治大/現中日)、高橋礼(専修大)、吉田侑樹(東海大/現日本ハム)、井口和朋(東京農業大北海道オホーツク/現日本ハム)、澤田圭佑(立教大/現オリックス)、田中正義(創価大/現ソフトバンク)【捕手】北村祥治(亜細亜大/現トヨタ自動車)、坂本誠志郎(明治大/現阪神)、宇佐見真吾(城西国際大/現巨人)【内野手】柴田竜拓(国学院大/現DENA)、藤岡裕大(亜細亜大/現トヨタ自動車)、下石涼太(東海大)、茂木栄五郎(早稲田大/現楽天)横尾俊建(慶應義塾大/現日本ハム)山足達也(立命館大/現Honda鈴鹿)【外野手】佐藤拓也(立教大/現JR東日本)、桝澤怜(亜細亜大/現NTT東日本)、高山俊(明治大/現阪神)、谷田成吾(慶應義塾大/現JX-ENEOS)、吉田正尚(青山学院大/現オリックス)
※北村は捕手登録も出場はすべて内野手

雨により明治大室内練習場で練習(侍ジャパン大学代表2017)

文・写真=高木遊