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“今年最もNPBに近い男” プロ注目の17歳右腕が独立リーグを選んだワケ


ロッテ・角中勝也(元高知)、中日・又吉克樹(元香川)ら、毎年のようにNPBに人材を輩出している四国アイランド(IL)plus。ハイレベルなリーグで“今年最もNPBに近い男”と関係者に熱視線を注がれている大器がいる。伊藤翔、17歳。徳島インディゴソックスにドラフト1位で入団した右腕は、新天地での夢に胸を膨らませている。

■中学で楽天ドラ1右腕に勝った147キロ右腕、高3夏はNPBスカウトも視察

 ロッテ・角中勝也(元高知)、中日・又吉克樹(元香川)ら、毎年のようにNPBに人材を輩出している四国アイランド(IL)plus。ハイレベルなリーグで“今年最もNPBに近い男”と関係者に熱視線を注がれている大器がいる。伊藤翔、17歳。徳島インディゴソックスにドラフト1位で入団した右腕は、新天地での夢に胸を膨らませている。

「1年でも早くNPBにという気持ちが一番。自分がマウンドに立った試合は負けないようにしたい」

 魅惑の可能性を秘めた逸材だ。元レンジャーズの大塚晶文(現パドレス3A投手コーチ)らを輩出した千葉の私立校・横芝敬愛高出身。小1で投手として野球を始めたが、肘を壊して中学時代は投手をまともにできず、中3年秋に手術。それでも、故障が癒えた高校入学を機に才能が開花した。入学当初は135キロだった球速は着実にアップ。「見ての通り、体が細い」と自分で分析するように、線の細さを補うべく体全体を使ったフォームを意識。下半身を徹底的にいじめ抜いた。

「とにかく下半身をやった。走りこんで、あとはウエイトの繰り返しでした。夏の大会前の合宿は1か月、追い込みで体がキツいのに1日20キロのノルマで走ってしんどかったです」

 努力の甲斐もあり、体重は入学当初の62キロから11キロ増えて73キロに。3年春に最速147キロを叩き出し、プロからも一躍注目される存在となった。エースとして挑んだ3年夏の千葉大会にはNPBのスカウトも視察。だが、3回戦の千葉明徳戦に逆転サヨナラ負けという、あっけない幕切れで高校生活は終了した。

「これじゃ、野球は辞められない。本気でプロを目指したいと思った」

■大学でも社会人でもない理由…「一発勝負より毎年勝負」

 ただ「最初は大学に行こうと思っていた」という伊藤が選んだ道は、大学でも社会人でもなく、独立リーグ。それには、明確な理由があった。

「NPBに行くには大学や社会人よりも近道。一番近いのはアイランドリーグだと思った」

 もちろん、プロ野球選手を送り出している強豪大学からの誘いはあった。転機となったのは、監督、部長と進路について話し合っていく中で、独立リーグの存在を教えられたことだ。徳島の南啓介球団代表と会い、気持ちは一気に傾いた。一番大きな要因は「毎年勝負」にあったという。

「4年間で一発勝負の大学より、毎年勝負をかけられるところに魅力を感じた。大学でピークが2、3年生になる時もある。自分が一番、旬なタイミングで入れるチャンスがあることに惹かれたんです」

 大学に進学すれば、プロに挑戦できるのは4年生になってから。実際にプロ注目として期待されて進学しながら故障などで伸び悩み、あるいは選手層の厚い名門校で出場機会を思うように得られず、プロ入りを断念する選手も少なくない。だが、独立リーグに進めば、指名の権利は毎年得ることができる。両親に「お前に任せる」と背中を押され、四国の地で勝負することを決断した。

■中学時代には楽天ドラ1右腕に勝利…「同じ舞台で戦いたい」

 昨秋のトライアウトで見事合格し、昨年、福永春吾(阪神6位)と木下雄介(中日育成1位)がNPBに指名された徳島入りにドラフト1位で入団を決断。中学時代にはシニアチームで同い年の藤平尚真(現楽天)と投げ合い、勝ったこともある。

「身近なところからドラフト1位で(NPBに)行っていることは刺激になるし、負けたくない。高校時代、自分は接戦で逆転される試合もあった。最後の我慢。勝ち切れる投手になって同じ舞台で戦いたい」

 175センチ、73キロと細身ながら、150キロに迫る速球は無限の伸びしろを秘めていることの裏返しでもある。初の一人暮らし。洗濯など家事も自らこなさなければならない。「料理はちょっとずつ練習している。ゆで卵は上手にできるようになったんです」と笑う表情には17歳らしいあどけなさが残るが、夢を語る表情は真剣そのものだ。

「独立リーグはNPBのスカウトの方が球場に足を運んで、アピールする場を与えてくれるというのが一番のメリットだと思う。自分で決めたことなので、プロを目指して頑張りたい。まずは今年中に150キロ以上を出すこと」

 今年はMLB通算555発のマニー・ラミレスが高知に加入し、大きな話題を集めている。もちろん、対戦するチャンスもあり、絶好のアピールの舞台となるだろう。大学でも社会人でもなく選んだ「独立リーグ挑戦」の決断が、正しかったということを証明するために――。四国の地で、夢を乗せた挑戦が始まる。

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