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「もう若手ではない」8年目、西武・菊池雄星が本気で考えるモデルチェンジ


日本プロ野球界で、いや、メジャーリーグに目を向けても、左腕で150キロ以上の速球を投げる投手は稀だ。西武・菊池雄星投手は、そんな特別な能力を持つ1人だ。ストレートは自己最速157キロを計時。スライダー、チェンジアップ、カーブを駆使しながら、昨季は自身初となる2桁勝利(12勝7敗)を記録し、防御率(2.58)ではロッテ・石川(2.16)に次ぐリーグ2位の成績を残した。前年の2015年は9勝10敗、防御率2.84。期待されながらも、なかなか結果を出せずにいた左腕が、ジワリジワリと本領を発揮し始めている。

■西武を離れた先輩たちに学んだ「信頼感」

 日本プロ野球界で、いや、メジャーリーグに目を向けても、左腕で150キロ以上の速球を投げる投手は稀だ。西武・菊池雄星投手は、そんな特別な能力を持つ1人だ。ストレートは自己最速157キロを計時。スライダー、チェンジアップ、カーブを駆使しながら、昨季は自身初となる2桁勝利(12勝7敗)を記録し、防御率(2.58)ではロッテ・石川(2.16)に次ぐリーグ2位の成績を残した。前年の2015年は9勝10敗、防御率2.84。期待されながらも、なかなか結果を出せずにいた左腕が、ジワリジワリと本領を発揮し始めている。

「最低限でも2桁。今年は15(勝)行きたいなって思いますね」というプロ8年目。菊池は“宝刀”の剛速球を前面に押し出したスタイルで打者に挑みかかるのかと思いきや、意外なことをつぶやいた。

「もうそろそろ力だけじゃなくて、モデルチェンジというか、試合を作れるピッチャーになることを、本気で考えて取り組んでいかないといけないと思うんです」

 昨季まで先発ローテの柱的な存在だった岸孝之が楽天にFA移籍。例年以上にチームやファンが菊池に寄せる期待は大きい。「岸さんが本当に偉大だったんで、僕一人で、とは思っていない。全員が自己ベストを1勝でも更新してカバーできれば」と話すが、岸、そして2014年に西武からロッテに移籍した涌井秀章の後ろ姿を見て、考えさせられたことがある。

「岸さんや涌井さんが投げている時は、2、3点入ると、みんなが『今日は勝つんだろうな』という雰囲気になった。そういうピッチャーが理想ですよね。僕はまだ2、3点あっても、簡単に先頭に四球を出したりしてバタバタさせてしまう。中継ぎの方を休ませられるような、野手の方に安心感を与えられるようなピッチャーになりたいんです。チームの信頼感を得るためにも、試合を作る能力にこだわっていきたいと思いますね」

■長く一線で活躍するためには…「力勝負のままでいいのか」

 意識の変化は、プロ野球選手としての自分を客観視することから生まれた。

「今年26歳。プロ8年目なんですけど、プロ野球はその倍の16年やったら、だいぶベテランですよね。そう考えると、折り返しまではいかなくても、もう若手ではない。いかに長く一線で投げられるのか。いつまで野球ができるのか。いつまでこのスタイルでいけるのか。それを冷静に考え、リアルに感じるようになった時、力勝負のままでいいのかと。どうしても速い球で抑えると気持ちいいですし、そうなってしまいがちなんですけど、投手としてもっと理想を上げないといけないかなって思いますね」

 信頼される投手になるために、まずこだわりたいのは「フォアボールを減らすこと」。ストライク先行の投球ができれば、球数は自然と減り、テンポ良く長いイニングを投げることができる。そうした制球力を身につけるため、「軸」を意識した投球を目指しているという。

「いいピッチャーの共通点があって、その1つが軸がぶれないこと。具体的に言うと、投げる直前まで、やっぱり体重が軸足に残っているんですよね。肩を開かず突っ込まずに、きっちり胸が割れている状態。ダルビッシュさんとか田中(将大)さんとか本当にきれい。田中さんのフォームとか、力が入っているようには見えないのに、うまく力が伝わるんでしょうね。僕は自分が客観視しても、ちょっと力んだフォームをしている。もっと力が抜いた形にしたいですね。そうすれば、怪我も減ると思うんです」

■「ここで嫌なことから逃げずに、どれだけ向き合えるかが大事」

 沖縄の自主トレではウエイトトレーニングにも励むが、それ以上に大切にしたいのが「ピッチングの基本」だという。

「僕らは技術職なんで、いくら筋トレだけをしてもコントロールは良くならない。やっぱり投げることでよくなると思うんです。本当に地道な作業ですけど、シャドーピッチングだったり、遠投だったり、キャッチボールだったり、基本的なことを、いかに丁寧にできいるか。根気強く同じことを何回できるかということが大事。

 きっちり同じタイミングで、同じ所に足をついて、同じ力で投げられるか。こういう地道な作業が、実は一番苦手なところで、今まで避けてきた部分。見て見ない振りしてフタをしてたんですけど、そこができない限りは四球も減らないでしょうし、ピッチャーとして成長はないですから」

 冬の過ごし方がシーズンを決める、とよく言うが、「この時期が本当に一番嫌いなんですけど、一番大事なのも自覚している(笑)。ここで嫌なことから逃げずに、どれだけ向き合えるかが大事だと思いますね」と話す25歳左腕。今季はひと味違ったスタイルをマウンド上で披露してくれそうだ。

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