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吉野光樹が東海大打線を完封!上武大が大会屈指の好カード制して神宮に王手

 10月29日、横浜スタジアムで横浜市長杯争奪第14回関東地区大学野球選手権大会(第49回明治神宮野球大会出場決定戦)が開幕。

全国優勝1回、昨春まで全国大会5季連続4強入りの上武大と、全国優勝7回の東海大という全国上位で対戦してもおかしくない大会屈指の好カードは、投手戦の末に上武大が2対0で制し、明治神宮大会の出場権のかかる準決勝進出を決めた。※決勝進出2校が出場権を獲得する。


先制のホームを踏んだ主将の市根井(背番号10)。打率.422を記録したリーグ戦から打線を牽引している


「びっくりしました」と目を丸くした上武大の谷口英規監督。嬉しい誤算となったのが、今季からエースの座を掴んだ吉野光樹投手(2年・九州学院)の快投だ。ストレートを軸に、スライダー、カットボール、カーブといった変化球を織り交ぜ、東海大打線に付け入る隙を与えず5安打9奪三振の完封劇を見せた。

 初回に先頭打者を安打で出したものの、犠打と空振り三振で2アウトとすると首都大学リーグ三冠王の平山快内野手(4年・東海大相模)をセカンドフライに打ち取り勢いに乗った。2回にはこの日最速146km/hのストレートをインローに投げ込み、相手打者に尻もちをつかせて空振り三振を奪うなど勢いは増すばかり。3回も走者を出したが見逃し三振と盗塁刺でピンチを脱出。侍ジャパン大学代表に選出経験もある吉田高彰捕手(4年・智辯学園)の手助けも得て、チームに流れを呼び込んだ。

 すると上武大は、4回に主将の市根井隆成外野手(4年・前橋商)が安打で出塁すると相手の連続バッテリーエラーで三進しチャンスを作り、吉田の内野ゴロの間に先制。援護点はしばらくこの1点のみだったが、吉野は「頼もしい先輩投手も控えていたので」と加減なしで飛ばしていきスコアボードにゼロを並べていった。
そして9回表には飯島健二朗内野手(4年・前橋育英)のタイムリーでダメ押し点をもらうと、疲れも感じさせない投球で9回も無失点に抑えて試合を締めた。

 熊本・九州学院高時代は2年冬に第四腰椎分離症と診断され2ヶ月間の絶対安静を強いられるなど苦労も多くエースにはなれなかったが、今や谷口監督が「積極的にトレーニングもしていて周りもエースと認めている」と言うほど、強豪を牽引する存在となった。
 東海大は甲子園出場経験者や強豪校出身の選手ばかりではあったが、谷口監督からの「負ける覚悟も必要」という言葉にも背中を押され、臆することなく投げ抜くことができたという。
 次戦は幾度も好勝負を繰り広げてきた国際武道大と創価大の勝者を相手に、2年ぶりの明治神宮大会出場をかける。試合の喜びもそこそこに吉野は「挑戦者の気持ちで戦いたい」と、既に視線は中1日で戦う準決勝(31日)に向いていた。


完封勝利の吉野。高校時代に焦らず我慢をして腰の故障を完治させたことが現在に繋がっているという


★横浜市長杯2回戦
上武大 000100001=2
東海大 000000000=0
【上】吉野−吉田
【海】原田–海野

文・写真=高木遊