BASEBALL GATE

大学野球

苦楽を糧に羽ばたく実力派左腕 鈴木翔天(富士大)

「時は来た!ドラフト指名を待つ男たち」

鈴木 翔天 すずき・そら
向上高→富士大
投手・左投左打・184センチ80キロ・1996年8月19日生(22歳)


 それは鮮烈な全国デビューだった。昨春の全日本大学野球選手権1回戦・福岡大戦で1点ビハインドの4回からマウンドに上がると、9回までの6イニングで2安打無失点、8奪三振1四死球という完璧な投球でチームの逆転勝ちを呼び込んだ。キレが良く最速で149キロにまで達するストレートに、スライダー、カーブ、チェンジアップといった変化球を織り交ぜる投球で、その後も飛躍を続けた。
 秋には北東北大学リーグで完全試合を達成、明治神宮大会初戦の大阪商業大戦でも5回途中まで4安打無失点9奪三振1四死球。足が攣って降板とはなったが初戦突破に貢献した。だが中1日の東洋大戦で「テングになっていた鼻を折られました」と振り返るように、3回5安打4失点でノックアウト。チームも7回コールドで敗れ実力不足を痛感した。

 そこで今春にかけて、ひとまわり体を大きくして軸となるストレートに磨きをかけ、カウントの取れる球種を増やそうとするなど、これまで以上の高い意識で取り組んできた。
 しかし、4月1日の投球中に左肘を痛めて離脱。手術するまでには到らなかったが、悔しさからくる苛立ちの中で3ヶ月を過ごした。6月末の東北地区大学野球選手権で公式戦復帰を果たしたが、その後も調子はなかなか上がらず「野球を初めて嫌いになりそうなシーズンでした」と悔しそうな表情を浮かべる。それでも徐々に状態を上げ、リーグ戦終盤の青森大戦で6回のロングリリーフを無失点に抑えた。
 また、10月7日の練習試合でも東京六大学リーグで首位を走る慶応義塾大を相手に6回2失点の内容でまとめた。さらにその後、豊田圭史監督からの助言でフォームを修正。持ち味である右打者のインコースへ対角線上に投げ込むストレート(クロスファイア)にも勢いが増しており、ドラフト2日後の27日から行われる明治神宮大会東北地区代表決定戦に向けて、順調な仕上がりを見せている。

 「野球に没頭できる環境に身を置きたかった」と関東の大学からの誘いを断り、神奈川から雪国・岩手に志願して入学し腕を磨いてきた。「とても濃い4年間でした」と振り返るように様々な苦楽を経験し、そこから得た大きな財産を糧に、さらなる高みを目指し続けていく。

文・写真=高木遊

TBSテレビ「プロ野球ドラフト会議」の番組公式サイト
http://www.tbs.co.jp/baseball-draft/