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侍ジャパン

侍ジャパン世界一奪還に向けて切り札となる日本人メジャーリーガーは誰か

Japan v Puerto Rico - Send Off Friendly Game For WBSC Premier 12
写真提供=Getty Images

侍ジャパンが「2017 WORLD BASEBALL CLASSIC™」での世界一奪還に向けて急ピッチでチーム作りを行っている。昨日、大谷翔平選手(北海道日本ハム)、筒香嘉智選手(横浜DeNA)らNPBを代表する18選手を先行して発信。そして、きょう現役メジャーリーガーである青木宣親選手(アストロズ)の電撃的な侍ジャパン入りを発表した。青木選手は、きょうの会見で「力を合わせれば、(WBCで)必ず勝てる」と話し、他のMLB所属の日本人選手たちの侍ジャパン入りも歓迎する意向を見せた。

しかし、ライバル国の動向を見ると、青木選手も「ほとんどの国のメンバーが(メジャーの)オールスター級」と語ったように、各国MLB所属の一線級の選手を招集し、世界一の座を虎視眈々と狙っている。2017年3月7日(火)のキューバ戦を皮切りに、世界一奪還への歩みをスタートさせる侍ジャパン。いよいよ迫った戦いの場に、侍ジャパンは、「世界一奪回」を果たすためにどのような選手を招集すべきなのだろうか。

今年11月、メジャー組抜きで戦ったメキシコ代表戦とオランダ代表戦。3勝1敗と勝ち越しに成功したものの、ベストメンバーとは言えない両国に対して、投手陣は4試合で計29失点と多くの課題を残した。昨日発表されたNPB組の投手は、増井浩俊(北海道日本ハム)、宮西尚生(北海道日本ハム)、大谷翔平(北海道日本ハム)、牧田和久(埼玉西武)、則本昂大(東北楽天)、菅野智之(巨人)、秋吉 亮(東京ヤクルト)の合計7名。このメンバーを見る限り、現段階で先発投手の不足と抑え投手不在と思われる陣容となっている。

 侍ジャパンが世界一奪回を果たすためには、必要不可欠となる「勝利の方程式」の確立。第一回優勝時には、藤田宗一、薮田安彦(ともに当時千葉ロッテ)や藤川球児(当時阪神)ら経験豊富なセットアッパーをブルペンに揃え、当時MLB・レンジャーズで数々の修羅場をくぐり抜けてきた守護神・大塚晶則へと繋ぐ勝ちパターンを確立していた。また、2009年の第2回大会でも、杉内俊哉(当時福岡ソフトバンク)、渡辺俊介(当時千葉ロッテ)、山口鉄也(読売巨人)、馬原孝浩(当時福岡ソフトバンク)ら多種多様な投手陣を中継ぎで起用し、準決勝からダルビッシュ有(当時北海道日本ハム)をクローザーとして登板させるなどチームの勝ちパターンを確立し、連覇という偉業を成し遂げた。

 それとは反対に、勝利の方程式を確立できないまま終わったのが、小久保監督にとって初の世界大会での采配となった2015年の「世界野球プレミア12」。準決勝の韓国戦で、先発の大谷翔平(北海道日本ハム)が7回を投げ1安打無失点、11奪三振と完璧な投球で韓国打線を寄せ付けず、2番手の則本昂大(東北楽天)が8回を無失点で抑えた時点で、多くのファンが侍ジャパンの決勝進出を確信した。しかし、3点差で迎えた9回に、続投の則本が3連打を浴びると試合の流れは急変。侍ジャパンは、3番手に松井裕樹(東北楽天)、4番手増井浩俊(北海道日本ハム)をつぎ込み逃げ切りを図ったが、押し出し四球や逆転タイムリー二塁打などで4点を奪われ韓国に逆転負けを喫した。試合後「今日の負けは自分の責任」と小久保監督が語った様に、投手采配が大きく勝負を分けた大会となった事は記憶に新しい。

 その反省点を踏まえ、2016年3月のチャイニーズ・タイペイ戦から、百戦錬磨の権藤博氏を投手コーチとして迎え、侍ジャパン投手陣立て直しを図っているが、先の強化試合でも権藤博コーチが「私にとっては最悪のゲームだった」とオランダ戦後にコメントするなど、ここまでの侍ジャパン投手陣の不安定さは、WBCでの世界一奪還に向けて大きな不安要素となっている。

 そんな中、侍ジャパンの世界一奪還を望むファンから、MLB所属投手の合流を望む声が日増しに高まっており、侍ジャパンがどんなピースを選択するのか注目が集まる。
その注目の中心にいるのが、「世界野球プレミア12」にもエースとして登板し、侍ジャパンとしての経験値も高い前田健太選手(L.A.ドジャース)。MLB移籍1年目から16勝(11敗)をマークし、シーズン途中に故障で苦しんだチームメイトの大エース・クレイトン・カーショーの穴を埋め、チーム最多の勝利数を記録。防御率3.48、175回2/3 を投げて179奪三振という安定した成績を残した。プレーオフでは3試合で合計8失点と失速はしたものの、メジャー1年目としては、上々のスタートを切れたと言っても良い。決勝の地であるドジャースタジアムに侍ジャパンの一員として前田健太が戻ってくる時が来るのか、今後の動向が注目される。

 一方で、コンディションによってWBC出場が難しい日本人メジャーリーガーがいるのも事実。その一人が、2015年春にトミー・ジョン手術を受けたダルビッシュ・有(レンジャーズ)である。2016年5月28日にメジャー復帰を果たし、その後はシーズン終了まで投げ抜き、7勝5敗、防御率3.41、100回1/3で132奪三振という好成績を残した。プレーオフではブルージェイズに4本塁打を浴びるなどし敗退したが、来季以降に明るい兆しを見せたシーズンとなった。しかし、WBC出場となると話は別と言わざる得ないだろう。トミー・ジョン手術を受けた投手が元の状態に戻るのは復帰から2年目が通例と言われており、その2年目となる2017年シーズンの頭にWBC出場は難しいと見るのが妥当である。

 また同様にコンディションの理由で、WBC出場が注目されるのが田中将大(ヤンキース)であろう。今シーズンは、メジャーで自己最多となる14勝目(4敗)に到達。
防御率は、3.07は、リーグ3位の成績。そして投球イニングも一流先発投手のひとつの指針である200イニングにはわずかに届かなかったものの199回2/3を投げ、165奪三振と自己最高の成績を上げた。先発した31試合でチームは23勝8敗とチームの勝利に大きく貢献し、厳しいニューヨークの地元メディアからも評価されるヤンキースのエース的存在となった。一方で、9月21日のレイズ戦登板後に右前腕の張りを訴えシーズン最後の2度の登板を回避する結果に終わった事実もある。ヤンキースとしては、田中が2014年に右肘じん帯部分断裂を患っていたことを考えれば、2017年のWBCに送り出すには慎重を期したいところだろう。2013年の第3回大会では日本のエースとして期待されながら、不調で中継ぎに降格し、最終的には7イニングを投げたのみに終わった田中。ヤンキースで経験を積んだ、田中が侍ジャパンのユニフォームを再び着ることがあれば、侍ジャパン投手陣にとって、これほど心強いことはないが、本人や関係周囲がどのような決断を下すのかは、まもなく明らかになるであろう。

そんな中、ファンからの侍ジャパン守護神待望論が強いのが上原浩治(カブス)だ。去就が注目されるなかで2016年のワールドシリーズを制覇したシカゴ・カブスとの契約も発表され、来季の現役続行が確定した。2016シーズンは、ボストン・レッドソックスで中継ぎとして47イニングで63奪三振、11四球という数字が示す通り、依然として侍ジャパンの守護神として活躍できる能力を維持している。そして特筆すべきは、国際試合で大学時代から25戦無敗を誇り、12勝0敗と圧倒的な強さを誇っていることだ。上原が侍ジャパンに守護神として加入すれば、「世界野球プレミア12」以降、侍ジャパン投手陣の課題となっている守護神不在を一気に解消できる可能性も出てくる。

 侍ジャパン先発陣を磐石のものとするために、2009年の第2回WBC優勝時の立役者で今季、自己最多となる16勝をあげた岩隈久志(マリナーズ)の動向も気になる。今季162回の自動契約イニング投球もクリアし、来季のチームとの契約も決まっているなかでどのような結論を下すのか。8月の小久保監督渡米の激励時も「ありがたい」と話し、侍ジャパンに加われば先発投手陣にとって大きな戦力になるだけに、その動向に大きな注目が集まる。

そのほか、ボストン・レッドソックス7年間で通算300試合以上に登板した中継ぎのスペシャリスト田沢純一投手(マーリンズ)も、侍ジャパン入りが期待される一人であろう。

 WBCまで3ヶ月を切り、いよいよ最終的なチーム作りに入った侍ジャパン。11月の強化試合後の記者会見で、「世界一奪還へ向けて、とにかく全力を尽くすだけ」と決意表明をした小久保監督が世界一奪還にむけて最終的にどのようなピースを選択するのか、注目が集まる。