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高校野球

大阪桐蔭・根尾昂
2発を浴びた夏の初登板

【写真提供=共同通信社】大阪桐蔭―沖学園  沖学園戦で力投する大阪桐蔭の根尾=甲子園


センバツ優勝投手、根尾昂が夏、初めてのマウンドに登った。

 大阪桐蔭の西谷浩一監督が最後の勝負を託すピッチャーだ。
「一番、信頼しているのは根尾です」

9時半開始のゲームなのに徹夜組がいたと言うから人気は相当なもの。
南福岡代表の沖学園に対して根尾はどんなピッチングを見せただろうか。

 1回表は、先頭打者を134キロのスライダーで三振、そして内野ゴロ二つで無難に滑り出した。ところが2回、4番の吉村脩希に変化球を投げてレフト線ツーベースを許す。2アウトを取ったが、7番、沖島和樹にライト前に146キロのストレートを運ばれて一、三塁。次のバッターの4球目、145キロのストレートが高めに浮いてキャッチャーが弾くワイルドピッチで先に点を与える苦しいスタートになった。

 先制点の足がかりになったツーベスを放った吉村はスライダーの甘いボールもあったと言う。
「スライダーのキレは東福岡の金光(雄紀)君の方がいいと思ったし、驚きませんでした」

 5回表は根尾が甲子園初の一発を浴びる。6番、森島渉が真ん中高めの甘いストレートをレフトポール際に放り込んだ。
森島渉はストレートを待ったと言う。
「初球スライダーがワンバウンドしたので次はストレートがくると思って狙いました」
6回は2アウトから斉藤礼がインコースのスライダーをサード強襲のツーベース。再び吉村がセンター前に同点のタイムリーヒット。これも134キロの甘いスライダーだった。
さらに根尾は8回にまた、レフトスタンドにソロホームランを浴びる。打ったのは1番の阿部剛大で、真ん中の変化球だった。

 大阪桐蔭、橋本翔太郎コーチが言う。
「そんなに本調子ではなかったですが、いい球もいっていました。完投もいけたとは思いますが監督の判断なので。ボールは高かったですね。抜けるボール、シュート回転も多かった。ホームランを打たれた球も高め。1、2の3で合わされてしまった」
中盤は変化球主体の組み立てにかえて、5、6、7、8回は内野ゴロが9つと狙い通りだったが、その変化球をヒットされたケースが計5本。スライダーのコントロールが定まらなかった。
「ボールがばらついたが、それも根尾の短所でもあり、長所でもある」と西谷監督。
 奪三振は7つと少なめ。変化球での三振が5つ、ストレートでの三振が3回表に2つ。三振は全て空振りで奪ったものだ。
その他の記録も含めると。
■奪三振数 7
■球数 119
■投球イニング 8
■ゴロアウト 11(遊ゴロ6、二ゴロ3、三ゴロ1、投ゴロ1)
■フライアウト 5(中飛2、右飛1、二飛1、遊直1)
■被安打 8(左4中2右2)
■四死球 1

 根尾のストレートが走っているときは簡単には引っ張れず、右方向への打球が多い。沖学園打線はスライダーを引っ掛けて左へのゴロアウトも多かった傾向がある。ストレートにはやはり詰まってセンターから右への飛球が目立った。

「ストレートは指にかかってくるときは狙っていてもなかなか打てないと思います」(吉村)
制球はままならなかったが、スライダーも一級品だった。変化球で2三振を喫した三浦慧太。
「球は速いし伸びがあった。ストレートを意識してしまうとスライダーについていけなかった」

キャッチャーの大阪桐蔭・小泉航平捕手が言う。
「スピードはあったけど球が高めに浮いていました。春に比べ球威が増したと思います。要所をしっかり抑えてくれたので根尾がリズムを作ってやってくれた」
沖学園の鬼塚佳幸監督も「レベル、格の違いを感じた。ベンチからホレボレしながら見ていました」と苦笑いして素直に負けを認めた。

先行された大阪桐蔭の攻撃は4回、中川卓也と藤原恭大の連続ツーベースとワイルドピッチで逆転した。一度は追いつかれるが、6回は2死から7番の石川端貴から死球を挟んで4連打。送球ミスもあって一挙4点を挙げて突き放した。
 そして根尾と藤原のアベックホームランで締め括って、10対4で桐蔭が3回戦進出を決めた。

 根尾はこれからもここぞという場面でマウンドに立つだろう。根尾に注目する高山ボーイズの同僚が今大会、出場していた。まず、前日、延長13回の末敗れた星稜・佐藤海心投手だ。
「甲子園のマウンドに立って昂のすごさが、改めてわかりました」
そう言う佐藤は星稜エースの緊急降板にしっかり対応して2イニングを無失点に抑えた。
もう一人は山梨学院の背番号「1」の垣越建伸だ。
「甲子園で1勝することもできなかった。やっぱり勝つことができる根尾は本当の力を持ってると感じました」
 そして今日の第3試合、前橋育英にサヨナラ勝ちした近江の北村恵吾内野手は岐阜選抜チームで一緒。笑いながら言った。
「ボールを引きつけてバックスクリーンに放り込むなんてえぐいです。試合の合間に室内練習場の通路で行き交いました。目が合って手を挙げました。頑張れ、って言う合図だと思います。それが勝てた要因のひとつです。根尾と対戦したい。打つ自信はあります」

 根尾は仲間に認められ、対戦を熱望されている。

(文・清水岳志)