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来年もいてもらわないと困る― 渡辺俊介が社会人チームに与えたインパクト


多くの子供たちの笑顔があふれていた。千葉県、君津市の新日鐵住金君津球場。かずさマジックがおこなった野球教室。その場所には未来の、将来のプロ野球選手がまちがいなくいた。

■社会人チーム「新日鐵住金かずさマジック」に加わった渡辺俊介というスパイス

 多くの子供たちの笑顔があふれていた。千葉県、君津市の新日鐵住金君津球場。かずさマジックがおこなった野球教室。その場所には未来の、将来のプロ野球選手がまちがいなくいた。

 年末、まもなく紅白歌合戦もおこなわれる。球界ではカープ鈴木誠也を形容する「神ってる」がなんと、流行語大賞にも選出された。そんな年の瀬、千葉県君津市でおこなわれた野球教室。16年夏の都市対抗野球にも進出した、かずさマジックは地域との交流に力を入れている。

 まず驚いたのは、球場のすばらしさ。「これが社会人のチームのものか……」と思うほどのもの。両翼95メートル、バックネット裏にはすばらしいスタンドがそびえ立つ。

 球場の壁面の色はマジック・カラーのブルー。「これは選手が全部ペンキで塗ったんですよ」。投手用ブルペンなども選手が土を積み上げた。すべてが手作りの自前のボールパークなのだ。

 マジックには元千葉ロッテマリーンズの渡辺俊介が在籍する。だがプロ・アマ規定の関係などあり、この日は指導ができなかった。しかし、すべての選手が丁寧な指導をおこない、子供たちは必死にボールを追いかけていた。

■チームに与えたインパクトとは…

 キャッチボール、守備練習、ティー打撃。そして最後に、マジックの選手によるロングティー打撃。スタンドにポンポン打球を放り込む姿に、拍手が巻き起こった。しかもそのボールは公式球ではなく、子供たちが使用するのと同じ軟式球。社会人チームとはいえ、レベルの違いが垣間見えた。13年、社会人日本選手権優勝。その実力をみせつけてくれたようだった。

 かつて自身も社会人時代にプレーし現在は兼任コーチとして在籍する渡辺俊介。彼がチームに与えたインパクトも大きい。

「身体のうまい使い方を選手に指導してくれています。今の自分の身体をうまく使うことですね」と内藤幸司コーチ。

「食事とかを含めて、とにかく準備の重要性を教わりました」とはファイターズにドラフト8位で指名された玉井大翔。

「イエスマンではなく、誰もが考えることをさせてくれた。答えを与えるのではなく、考えることを」と鈴木秀範監督。

■鈴木監督「来年もいてもらわないと困る」

 鈴木監督は続ける。

「来年、俊介がプレーをするかは僕もわかりません。でも必ず、ここの場所にいます。というか、いてもらわないと困ります。彼の存在はチームにとって本当に大きい。若い選手に、いろいろなものを受け取ってもらわないと」

 野球教室、多くの若手選手たちが子供たちに一生懸命指導をおこなっていた。教えることで自分に身に付くこともきっと多いのだろう。

 社会人野球、厳しい環境だろう。だが、かずさマジックとは、とても先が明るいチームに感じた。

 残念ながら、16年の日本選手権は予選で敗退した。しかし、房総から日本全国へ、千葉の風が吹くのはすぐ近いのではないだろうか。そして、ここからマジック、そしてNPB、MLBで大きなホームラン、剛速球を投げる選手が出て来るはずだ。

山岡則夫●文 text by Norio Yamaoka
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。 Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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