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社会人野球

怪我がちだった大学時代から大変身を遂げた近本光司が大阪ガスに初優勝をもたらす【都市対抗野球】

第89回都市対抗野球大会の決勝戦が東京ドームで行われ、大阪ガス(大阪市)が2対0で三菱重工神戸・高砂(神戸市・高砂市)を破って、初優勝を飾った。

都市対抗2度、日本選手権3度の準優勝を経験した大阪ガスがついに頂点に立った


今大会絶好調の男が試合を決めた。

8回裏、大阪ガスはこれまで好投を続けてきた三菱重工神戸・高砂の右腕・守安玲緒投手から安打とエンドランで1死二塁のチャンスを作ると、3番の峰下智弘内野手がセンター前に運ぶタイムリーで先制。なおも代わった藤井貴之投手(日本生命から補強)から1死一、二塁とチャンスが広げると、打席には前の打席まで大会打率が5割ちょうどの近本光司外野手(大卒2年目/身長170cm)。

ここで近本は、今大会通して取り組んできた「外角の球に余計な力は入れず、バットとボールの力で打つイメージ」を、まさに体現した打撃で華麗にセンター前へ打球を運び二塁走者が生還。これがダメ押し打となり、大阪ガスの初優勝と個人賞最高の栄誉にあたる橋戸賞をグッと引き寄せて掴み取った(首位打者賞も獲得)。

関西学院大時代は怪我がちで、目立った実績は3年春のリーグ戦ベストナインくらい。それでも「“小さいから遠くに飛ばせないわけではない”とか定石をひっくり返すのが好きなので」と語る反骨心で着実に力をつけて、強豪・大阪ガスで5番に座るまでになった。俊足もより生きて、今大会では大会最多記録に迫る4盗塁を記録。今後はドラフト指名や、侍ジャパン社会人代表として出場するアジア大会での活躍も期待される有望株となった。

まずは1ヶ月後に迫ったアジア大会に向けて「しっかり調子を上げていきたいです。大事な試合で打てる選手が良い打者だと思っています」と抱負を語る。そんなさらなる活躍を誓う姿は、柔和な表情と小さな体からは想像できないたくましさに満ちあふれていた。

近本によると、社会人に入ってから「追い込んだトレーニングや振り込みで1度体を重くして調子を落とし、本番で上げていく」という調整法を掴み、大事な試合で結果を残せるようになったのだという

文・写真=高木遊