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陽岱鋼を残すのみ…例年以上に活発化のFA戦線、それぞれの決断の理由とは


今オフのフリーエージェント(FA)選手で唯一、去就が定まっていなかった日本ハム・陽岱鋼の巨人入りが決定的となり、FA戦線も佳境を迎えた。権利を行使した選手は6人。うち5人が移籍を選択した。例年以上に活発となった今オフのFA戦線を振り返る。

■5選手が移籍、速攻仕掛けた巨人は史上初3人獲りへ

 今オフのフリーエージェント(FA)選手で唯一、去就が定まっていなかった日本ハム・陽岱鋼の巨人入りが決定的となり、FA戦線も佳境を迎えた。権利を行使した選手は6人。うち5人が移籍を選択した。例年以上に活発となった今オフのFA戦線を振り返る。

○ソフトバンク・森福允彦投手(巨人移籍)
○DeNA・山口俊投手(巨人移籍)

 FA戦線を最も賑わせたのは、ソフトバンク・森福允彦、DeNA・山口の巨人入りだ。巨人にとっては陽岱鋼を加え、史上初の1シーズンのFA選手3人獲りが実現しそうだ。

 森福は07年の入団以来、中継ぎとして通算10年で384試合に登板。4度のリーグ優勝を支え、絶対的なセットアッパーとして君臨した。最近2年は安定感を欠くこともあったが、ベテランとしての経験は豊富。勤続疲労の見える山口鉄ら手薄な左の中継ぎ強化を狙った巨人との思惑が合致。移籍表明した1日の会見では「ホークスに残っても成長できると思うが、新たな挑戦をしたいという気持ち」と新天地で再出発することを涙ながらに語った。

 山口俊は111セーブを挙げた抑えから14年に先発転向し、今季はチームトップの11勝をマーク。巨人・菅野と並びリーグトップの5完投と抜群のスタミナを見せつけた。エースとして移籍か残留か悩んだが、11月8日に移籍を決断。会見では「残留したい気持ちは強かったけど、選手である以上、評価を大事にしたいと思った」と号泣した。中日と巨人の争奪戦となり、最終的に巨人入りを表明した。

 ともに移籍の理由の一つに挙げたのが「一番、最初に声をかけてくれたこと」。交渉解禁初日の11月11日、両選手への思いを平等に伝えるように、巨人・堤GMが福岡から都内に飛び、異例の1日2選手の獲得交渉を実施。3年ぶりの覇権奪回に向けた情熱が、実を結んだ形だ。

■岸は「故郷への思い」、糸井は「チャレンジ」、栗山は唯一残留

○西武・岸孝之投手(楽天移籍)

 投手では西武・岸孝之も移籍を選択した。涌井(現ロッテ)の移籍以降、西武のエースとして活躍し、入団10年で通算103勝をマーク。球団にとっても絶対的に必要な戦力だったが、岸は「地元に恩返しをしたいなという強い思いがありました」と故郷・宮城への思いをもって楽天への移籍を決断。星野仙一球団副会長の熱烈なラブコールも実り、4年総額16億円とみられる大型契約で杜の都に凱旋する。

○オリックス・糸井嘉男外野手(阪神移籍)

 野手ではオリックス・糸井嘉男が移籍の道を選んだ。日本ハムからトレードで13年にオリックス入りし、持ち前の打撃力に加えて35を迎えた今季は53盗塁で、史上最年長での盗塁王を獲得。「自分自身ももっと上目指したい気持ちと、それに変化というのが必要やったのかなと思ってチャレンジしようと(思った)」と移籍を決断し、岸同様に4年総額18億円とみられる大型契約で阪神入りを決めた。阪神は就任1年目・金本監督の直接出馬で大物を口説き落とした。

○西武・栗山巧外野手(西武残留)

 唯一、FA宣言しながら残留したのが西武・栗山巧だ。今季は通算1500安打を達成し、プロ15年目で初のオールスターにも出場。ベストナインにも3度選ばれたベテランは権利を行使し、移籍を選択に入れた上で複数回にわたる球団との交渉の上で『これからもライオンズのユニフォームを着て野球をやりたい』という思いの、最高の意思表示になるのかなと思いました」と残留を決断。FA権を再取得できるのは37歳となる4年後となり、「生涯・ライオンズ」を覚悟で球団の顔としてチームをけん引していく。

■FA移籍にDeNA筒香「文句を言う人はいない」、球界活性化の側面も

 涙の人間模様が見られたFA戦線。権利取得はすなわち主力選手の証明であり、人的補償などの選択もあるが、移籍される球団にとっては大きな痛手となる。もちろん、長年応援してきたファンにとっても思いは同様だ。それでも、すべての選手が悩んだ上で出した結論であることは間違いない。

 山口俊が移籍したDeNAの主将・筒香嘉智のコメントが印象的だ。

「FA権をとれる選手はプロでも多くはないし、自分で取った権利について文句を言う人はいない。俊さんと一緒に野球をやってきたので、いろいろな感情はあるけど、来年からは敵になる。そうなれば感情は入らないし、全力を尽くすだけです」

 FAは球界を活性化させ、発展させる側面もある。移籍を決断した者、残留を決断した者、それぞれの場所でどんな活躍を見せてくれるのか。来シーズンの一つの楽しみになる。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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