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大学で初めて硬球を握った左腕が王者・上武大らを相手に好投中!鈴木逸斗(作新学院大)【神宮だけが大学野球じゃないVol.2】

★強豪を相手に好投

 関東・甲信越の大学によって構成されている関甲新学生野球リーグ。上武大が2013年春に日本一、15年春からは5季連続全国大会4強入りを果たした。さらに2016年秋のプロ野球ドラフト会議では白鴎大・新潟医療福祉大・平成国際大から計4人(※)が指名を受けるなど地方リーグ屈指のレベルを誇るリーグで、異色の左腕が活躍中だ。
※白鴎大:大山悠輔(阪神)中塚駿太(西武)、新潟医療福祉大:笠原祥太郎(中日)、平成国際大:狩野行寿(DeNA)

 5月6日に行われた春季リーグ第5節2回戦で作新学院大は関東学園大を9対3で下し、対戦成績を1勝1敗のタイに戻した。打線が上手く繋がっての9得点だったが、そのリズムを守りから作ったのが先発左腕の鈴木逸斗(すずき・はやと)だ。130km/h台中盤ながらキレの良いストレートに、打者の手元で曲がるスライダーとチェンジアップで11三振を奪って3失点完投勝利を収めて今季3勝目を挙げた。その中には7連覇中の上武大から挙げた白星もあり、秋に続いての金星を挙げている。


自らの持ち味を「腕の振りの強さとコーナーに投げ分けること」と語る鈴木。主に2回戦の先発を務め、チームには欠かせない存在となっている


★硬式最後の1年

 2016年夏の甲子園で全国制覇も果たした作新学院高校出身の4年生だが、鈴木は同校の軟式野球部出身という異色の経歴を持つ。栃木・国分寺中軟式野球部時代は県大会出場すらなかったが、その素質を見込んだ作新学院高校軟式野球部から特待生でのスポーツ推薦を得られたため、同校に進学。当時は練習がそこまで好きではなく、もともと硬式野球をやるつもりもなかった鈴木にとっては好都合な話であった。
 とはいえ、作新学院高校の軟式野球部は全国優勝9回、国体優勝8回、関東大会優勝33回を誇る関東随一の強豪。「入ったら練習がめちゃくちゃキツかったです」と苦笑いして当時を振り返るが、着実に力をつけていった。そして3年夏には全国高等学校軟式野球選手権大会に出場した。

 準決勝の中京高校対崇徳高校の試合が0対0で延長50回までもつれ込み大きな話題となった大会で、作新学院は初戦敗退とインパクトは残せなかった。だが、鈴木にそこで「硬式でも通用するか試してみたい」というさらなる欲が生まれ、進学した作新学院大学で硬式野球部の門を叩いた。
 作新学院大の大塚孝監督は「3年生にも軟式出身の子がいますし、1年もすれば何ら問題ないですね」と語るように順応した。2年春に肘の故障こそしたが、その間に行ったトレーニングの成果も表れて3年春から登板機会を掴んだ。
 実力の高いリーグの中で実績を積み重ねている鈴木だが、卒業後は社会人で再び軟式球を握る予定だ。
 今後の目標はやや控えめながら「最低でも1部残留。チームを1つでも上の順位に押し上げて卒業したい」と話す。硬式でも通用した証をさらに残すため、そしてチームのために、残された試合も思いきりよく腕を振っていく。



文・写真=高木遊