今季初勝利を挙げ、ファンの声援に応える中日・吉見＝ナゴヤドーム【写真提供:共同通信社】

これぞ竜の黄金期を支えたエースの投球だ。中日の吉見一起が12日の東京ヤクルト戦で今季初登板初先発に挑んで6回1失点。三者凡退に抑えたのは2回の1イニングのみで計7安打を浴びるなど塁上を賑わしながら、大きなピンチと感じさせなかったところに吉見の真骨頂が見えた。

　「初回をゼロに抑えられたのが勝因」と吉見が振り返った1回表。先頭打者・山田哲人を内野安打で出塁を許して得点圏に進めるも、3番・バレンティンを空振り三振。続く4番・青木宣親はピッチャーゴロに打ち取り立ち上がりの要所を凌いだ。2回以降は勝ち方を知っている吉見ならではの投球を展開。2回から5回までイニングの先頭打者からアウトを取ったことで、失点は5回に内野ゴロの間に許した1点のみにとどめた。

　走者を背負っても危なげない投球を展開した背景には「味方が初回に3点を取ってくれたので、相手の打線には繋がれて一発を食らうのだけは避けようと意識した。シングル（安打）ならオッケー。ホームに還さなければという意識で投げていた」と、数多の修羅場をくぐりぬけてきた吉見だからこその境地があった。そして、「今年がダメなら（引退も）という気持ちで開幕に合わせてやってきた。自分としてはやるべきことをやって、シーズンに向けた段階も踏めていた。きょうはバッターとの18.44メートルの間で、こうして、こうやって、こういうふうに打ち取ろうと考えながら投げられた」とその言葉は自信に満ち溢れていた。

　オープン戦での不振を振り払っての今季初登板初勝利。第6の先発投手だった吉見が結果を出したことで、中日の先発ローテが一気に固まってきた。