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【THE INSIDE】「千葉県の高校野球を支えていこう」指導者たちの熱い思い…座談会(2)


千葉県で活躍する指導者たちの熱い座談会。学校としてはもちろん野球部に頑張ってほしいという思いは示してくれるものの、かといって、特別に優遇されているわけではないという環境だ。

そんな中で、積極的に勧誘するというよりも、「集まってきてくれた生徒たちを育てて、そこで何が出来るのか、どんなチームにしていくのか、ということが最大のテーマ」というところで意見は一致した。

「千葉県の高校野球を支えていこう」指導者たちの熱い思い…座談会(1)

そして次は、野球を通じて学べることは野球の技術ということ以外にもいっぱいあるのだという話になっていった。

<出席者>
■成田・尾島治信監督
成田→日本大を経て、社会科教員として成田に赴任。野球部部長を経て2000年から監督就任。2006年春、2007年夏に甲子園出場。10年夏には甲子園ベスト4に進出。

■千葉敬愛・山崎祐司監督
都立武蔵丘→国際武道大を経て、埼玉県教員として所沢東、定時制の川口県陽などを経て、千葉敬愛。部長を経験して監督就任5年目。2017年春季県大会は準優勝を果たし、春季関東大会にまで導いた。

■検見川・酒井光雄監督
市立船橋→日本体育大を経て、特別支援学校教諭などを経て、2015年から検見川に赴任。監督就任2年目の17年夏は千葉大会ベスト4まで導いた。

野球を通じて学べるものが大きい…それが高校野球の魅力
――成田と千葉敬愛の場合、県外生というのは何人かいますか。寮などもあるのでしょうか。

尾島:一応、運動部の寮はあるのですけれども、あくまでもこれは遠い子の寮ということで物理的な問題からの寮ですから、野球部寮というものではないんです。

山崎:ウチは毎年校内合宿はやりますけれども、寮はないです。宿泊可能な合宿所は学校にあります。

酒井:ウチは公立ですし、合宿所も何もグラウンドもフルにはないですから、もちろんみんな通える範囲の子たちです。そんな状況でやらなくてはいけません。

尾島:ウチは県外からの希望者もたまにいますよ。勉強も野球もやりたいという希望でね。土浦から「どうしても来たい」ということで希望してくれた子もいました。今年も、新入生で遠いから、寮に入りたいということで希望している子もいます。

――平日の練習環境としてはどんな状況なのでしょうか。

酒井:学校としては(夜の)8時には全員下校ということになっています。それと火曜と水曜は7限授業です。

――そうであれば、今の季節(冬)なんかだと、グラウンドへ出てきたらすぐに暗くなってしまうんじゃないですか。

酒井:そうですね。トップシーズン中も内野しか使えない状況なので、3学年で80人以上になっていましたけれども、練習は8時終了で8時20分には完全下校です。それに、毎週英語と国語はテストがあるのですが、それで落ちると追試とかがいっぱいあるので、練習にも出られない子も出てきます。相違点では学校としての縛りも厳しいですね(苦笑)。

尾島:それで言えばウチも必ずしも恵まれてはいませんよ。英語の単語テストと古文のテストは毎時間やっていますからね。それに土曜日は毎週3限まで授業ですから、シーズンに入っても土曜日はよくて1試合しかやれません。そうなると、なかなか相手がいないんですよ。土曜日午後1本だけでいいですかというところで頼んで、それでもいいよというところとやるという感じですかね。

――練習試合の相手探しということも含めて、必ずしも恵まれているとは言えない環境なんですね。

尾島:そうなんですよ(苦笑)。

山崎:それで結果を出されているのだから、凄いですよ。そういう点では、(千葉敬愛は)多少は恵まれているのかもしれませんが、ただ、専用グラウンドではありませんからね。体育の授業でも使っていますからね。学校としては、今後の中でグラウンドを作ろうかという計画もあるみたいですけれども…、多くの野球部を強化している私学としてはそれでやっと一緒というところですからね。

尾島:試合経験ということで言えば、春休みは試合数は多く組んでいます。東北とか北関東で、お付き合いさせていただいているところが来てくれたりしているので…。それに、春休みは、多くの選手も使っていきたいので試合数は多くしています。ただ、投手が持つかどうかというところがありますけれどもね。それと、相手を迎えるということでも学ぶことはありますから…。

――夏休みなんかはどうですか。

尾島:夏休みは、夏の大会前の調整をしていきながらも、新チームの青写真は出来ていてイメージが大体できている中で、やっていっています。

山崎:千葉県は、夏休み中にすぐに一次予選が始まってしまいますからね。だから、夏を目指しながらも新チームもイメージしていますよ。

尾島:決勝まで行って負けたりすると、新チームはもう1ヶ月ないですからね。

――成田の場合でいうと2010年には甲子園でベスト4まで進んで、長いこと向こうにいたこともあったじゃないですか。帰ってきたらすぐに、秋の大会の準備という形になったのでしょうけれども、その時は、新チームはどのようにしていたのですか。

尾島:あの時は勉強になりました。最終的には秋は県大会の16くらいで負けるのですが、(エース)中川の下に、今年DeNAに入った(立教大→JX-ENEOSを経てドラフト4位)齋藤俊介というのがいたので、それで最低投手が作ってあるので、何とかなるなということは思っていたのですけれども、捕手が作れていなかったですね。

成田・尾島監督はかつて、検見川・酒井監督を中学時代に勧誘していたことがあった
――公立の検見川の場合は、夏を戦いながらの新チームの構想というのはどうですか。

酒井:新チームのことも考えたいのですけれども、検見川の場合、夏はマリンスタジアムの球場係をやっていますのでの、負けた場合は全員そこに駆り出されます。

尾島:成田もそうですよ。以前は学校に比較的近い大谷津球場でした。今はナスパスタジアムですね。ベンチ入り以外は全員手伝いですから、秋をイメージしていても関係なくその係をやらなくてはいけないですね。

山崎:千葉敬愛としては私が以前に県の高野連理事をやっていた時は、30人くらい手伝っていましたけれども、今はやっていないですね。

――大会の係をやると、チーム作りとしては厳しいところも出てくるでしょうけれども、野球以外のことも含めて学ぶところも多いんじゃないですか。

酒井:それはもう、マリンスタジアムとかではいろいろなことを学べます。アナウンスも検見川の生徒ですし、来客を迎える部屋の担当も検見川の生徒がやっていますから、そういう学びの場は非常に多いです。

――それは、素晴らしいことですけれども、ただ、新チームの構想という点では大変ですね。

酒井:そうです、(部員は係として)決勝戦までいなくてはいけませんからね。ただ、今年はたまたまベスト4まで行けましたので、決勝戦の係は免除していただきました。

――それは、お疲れさまというご褒美だったということですか。

酒井:そうかもしれませんが、いつもは負けたと同時に新チームというより、球場の係としての役があるということです。

――免除は、たまたま、今年の夏だけだったということですよね、次からまた復活するんですよね(笑)。

酒井:そうですね(苦笑)。だけど、この経験は人間力としてはもの凄く育つと思いますよ。ただ、その間技術向上に関しては、難しいですけれどもね。

――それは、教育者的立場としてはいいことですが、監督という立場としては厳しいということですね。

酒井:その役を終えてからの、人間的成長というのは計り知れないという気がしています。検見川の子たちというのは、おとなしくて人見知りする子とかも多いんですけれども、これを経験してからは挨拶もしっかりと出来るようになっています。確実に成長しているなということは実感できます。それは、いろいろなお客さんが来られて、そこに接することで成長させていただいているのだと思います。

――周囲の大人が育ててくれるということもありますね。

酒井:係としてはチームのTシャツを着なくてはいけないので、サボったり適当なことも出来ません。それと、周囲の人が知ってくれる、見ていてくれるということもあります。今年は特に、いつもは係しかやっていない検見川が、ここ(準決勝)まで残ったということで応援していただけたということもあったと思います。

尾島:球場の係をやると、生徒は怒られながらも間違いなく成長しますね。ウチは春と秋も、使用するのであれば、ナスパスタジアムの係にはなっていますから。今年から、部長が球場主任にもなっていますから、よりきちんとしていかないとと思っています。

――高校野球というのは、こうして野球だけではなく、野球を通じて学んでいくということの大事なことも多いのでしょうね。

全員(異口同音に):そうですね。それもまた、教育としての高校野球だということだと思います。

――それがまた、高校野球の魅力ということにもなるんですね。

全員:そうだと思います。

座談会(3)に続く

成田・尾島監督はかつて、検見川・酒井監督を中学時代に勧誘に行っていたことがあった
成田・尾島治信監督
千葉敬愛・山崎祐司監督
検見川・酒井光雄監督
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