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プロ野球

DeNAに新たな化学反応を…田中浩康にかかる期待

◆ 現役続行に賭けた男

 DeNAは14日、ヤクルトを自由契約となった田中浩康の獲得を発表した。

 田中は2004年の自由枠でヤクルトに入団してから、燕一筋で12年間プレー。通算1195試合に出場し、ブレイクを果たした2007年にはベストナインを受賞。2012年はベストナインとゴールデングラブ賞をダブル受賞するなど、リーグを代表する二塁手へと成長した。

 ところが、2007年から続けた130試合以上の出場が2013年に途切れてしまうと、そこから年々出場機会が減少。今年の一軍出場はわずかに31試合だけに終わる。

 迎えたこのオフ、チームからコーチ転身の打診を受けるも、田中はこれを拒否。現役続行の道を模索することになった。

 大卒・自由枠での入団で、長らくチームに貢献してきた男…。ここで球団側の要請を断るのには相当な勇気が必要だったことだろう。それでも男は“現役”にこだわった。

◆ 強力なライバルに屈するも…

 田中の前に立ちはだかったのが、山田哲人という存在である。

 2013年に打撃不振の田中からポジションを奪うと、2014年にはリーグ最多の193安打を放ち、打率.324をマークするなど大ブレイク。その後の活躍は皆さんもご存知の通りで、2015年にトリプルスリーを達成すると、今年はプロ野球史上初となる2年連続のトリプルスリーを成し遂げた。

 この山田の台頭により、苦しい状況に追いやられたのは確か。それでも、ただ争いに敗れたわけではない。

 その後も出場機会を増やすべく、一塁や三塁、遊撃のみならず外野にも挑戦。2015年には外野手としても23試合に出場し、失策0と無難にこなしてみせた。

 職人肌の選手でありながら、近年は器用な一面も発揮。強力なライバルの出現を経て、選手としての幅は確実に広がった。

◆ DeNAに「プラス」をもたらす存在として…

 まだやれる――。そんな男に声をかけたのがDeNAだった。

 12日に甲子園球場で開催された12球団合同トライアウト。当日朝、参加者の中に田中浩康の文字はあったが、直前で参加が取りやめとなった。そこから中1日でのDeNA入団。おそらく早い段階でほぼほぼ決まっていたことだったのだろう。

 守りでは内外野をこなすことができ、打っては通算293犠打を決めているつなぎの名手。粘り強く渋い打撃が持ち味で、いま自分がなにをすべきなのか、状況を見て求められたことを遂行する能力に長けている。

 若くイケイケな選手が多いDeNAの中で、こうした“いぶし銀”タイプの選手はより一層重宝されることだろう。しかも、本職である二塁は近年チームが“泣き所”としているポジション。課題解消にはまさに打ってつけの存在だと言える。

 さらに、チームを率いるのはアレックス・ラミレス監督。ヤクルト時代に共に戦った“仲間”だ。

 田中の後ろ、クリーンナップを打つことが多かったラミレス監督は、誰よりも田中の貢献度を知る人物だと言っても過言ではないだろう。「まだやれる」、これはラミレス監督をはじめとするDeNA側も同意見。だからこそ獲得に乗り出した。

 初めてのCS進出から、さらに一歩前に進むために。田中浩康は若きチームを前進させるピースとなるか。