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独立リーガーに立ちはだかる“レベルの差”

写真提供:共同通信

■独立リーグという選択肢

 高校通算111本塁打の清宮幸太郎(早稲田実高)が超目玉とされた2017年のドラフト会議。7球団競合の末に日本ハムが交渉権を獲得したのは周知の通りだが、これは1995年の福留孝介(PL学園高)に並ぶ、高校生の最多競合記録でもあった。その陰で、もう1つの「最多記録」が生まれていたのをご存じだろうか。西武3位の伊藤翔(徳島インディゴソックス)を筆頭に、独立リーグから6人が本指名を受け、過去最多だった2010年の4人を上回ったのである。

 現在、日本には3つの独立リーグが存在する。一番の古株が、2005年に創設され、現在は四国4県で活動している「四国アイランドリーグplus」(以下、四国IL)。次いで、07年からスタートし、今では福島県から滋賀県まで10球団が加盟する大所帯となった「ルートインBCリーグ」(以下、BCリーグ)。そして、09年から13年まで活動していた「関西独立リーグ」を前身とし、14年から新リーグとなった「ベースボール・ファースト・リーグ」(以下、BFL)だ。

 これらの独立リーグからドラフト指名を受けた選手は、今年を含めて総勢91人に及ぶ(図1)。2012年から14年にかけては指名人数が大きく減ったものの、ここ3年間では合計30人が指名されており、再び存在感を増してきている格好だ。この背景には、「アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の代表メンバーにも選ばれた又吉克樹(中日)の活躍や、三軍制を敷く球団が増えて裾野が広がったこともあるだろう。

 NPB入りを目指す選手にとって、独立リーグでプレーするメリットはいくつか考えられる。1つは、指導者や選手にNPB経験者が多いことだ。中には、マニー・ラミレス(高知ファイティングドッグス)や岩村明憲(福島ホープス)といった元メジャーリーガーもおり、百戦錬磨の技術を間近で学ぶことができる。また、ドラフト指名のチャンスが毎年あることも大きい。例えば指名漏れした高校生の場合、大学進学なら4年後、社会人入りしても3年後までは指名を待つ必要があるが、独立リーグでプレーすれば翌年から指名を受けられる。実際に、冒頭で名前を挙げた伊藤はこれを理由に四国ILに進み、高卒1年目でNPB入りを勝ち取っている。

■“レベルの差”を数字で表す

 ただ、指名後に目を向けると、厳しい現実が見えてくる。昨年までに独立リーグからドラフト指名された82人のうち、一軍デビューを果たしたのは38人と、半分にも満たないのだ。その難関を突破した38人の中でも、一軍に定着したといえるシーズンがあるのは、投手なら又吉、野手なら角中勝也(ロッテ)、内村賢介(元DeNA)、三輪正義(ヤクルト)、亀澤恭平(中日)くらいだろう(表1、2)。

 では、独立リーグとNPBの間にはどれほどのレベル差があるのだろうか。それを推し測るため、「連続した2年間において、四国ILとNPB二軍、またはBCリーグとNPB二軍の両方でプレーした選手」を対象に、以下の方法で分析を行った。

(1) それぞれのリーグで、投手なら投球回、打者なら打席数あたりの各種成績を算出する
※シーズン途中に移籍や派遣があった場合は、同一リーグの前後年に合算する
(2) それぞれのリーグで、投球回または打席数を比較し、少ない方を抽出する
(3) (1)に(2)を掛け、少ない方の投球回または打席数に換算した各種成績を算出する

なお、「連続した2年間」としたのは年齢の影響を極力排除するためで、対象を「NPB二軍」としたのは、一軍のサンプル数が少ないことと、独立リーグ出身選手の主戦場が二軍になっているという現実的な問題によるものだ。また、関西独立リーグとBFLについては、同様にサンプル数不足から分析を行っていない。

 実際に、昨年のドラフト6位で指名された福永春吾(阪神)の奪三振数を例に挙げよう(表3)。福永は四国ILでは97回2/3で81奪三振、NPB二軍では72回2/3で54奪三振を記録しているため、1投球回あたりに直すと、奪三振数はそれぞれ0.83、0.74となる。NPB二軍の投球回の方が少ないため、四国ILでの奪三振数をNPB二軍と同じ72回2/3に換算すると、60.3となる。つまり、72回2/3を投げたとき、四国ILでは60.3奪三振、NPB二軍では54奪三振になることが分かる。この要領で、全ての対象データを合計し、各種指標を算出した。

■独立リーグ同士でも環境は異なる

 まずは投手から見ていこう。今回の分析では守備の影響を除外するため、被本塁打率、与四死球率、奪三振率、FIPの4項目で比較を行った(表4、5)。その結果得られたのが、四国IL、BCリーグのいずれも、NPB二軍の方が成績は悪くなるという事実だ。また、いずれの指標も、BCリーグの投手の方が優れている点は興味深い。BCリーグに比べて四国ILは「投高打低」ということもあり、NPBでの活躍を予想するうえでは、四国ILの投手成績は若干差し引いて見ることが必要なのかもしれない。

 次に、打者を打率、出塁率、長打率、OPSで比較すると、やはり四国IL、BCリーグともにNPB二軍の方が数字は悪くなる結果となった(表6、7)。こちらも、BCリーグの打者の方がより好成績をマークしているが、各指標をそれぞれのリーグに対する比率で見ると、ほぼ互角である。打者に関しては環境の違いを考慮する必要はさほどなく、純粋に数字が良い選手の方がNPBで活躍するといえそうだ。

■角中、又吉に続けるか

 では、今年のドラフト指名選手はこうしたレベルの差を乗り越え、角中や又吉のようなトッププレーヤーになれるだろうか。今回の分析結果を基にして、ルーキーイヤーの二軍成績を予測してみよう。

 6人が指名された投手では、楽天7位の寺岡寛治(石川ミリオンスターズ)に期待が持てそうだ(表8)。奪三振率と被本塁打率は6人中トップで、制球面が改善されれば一軍でも十分通用すると思われる。また、伊藤も将来性を含め、今後注目していくべき存在だろう。与四死球率は6人の中で最も低く、三振を奪える決め球が備われば、独立リーグ出身者では初めて先発で成功を収めるかもしれない。

 野手では、DeNA9位の山本祐大(滋賀ユナイテッドBC)、ロッテ育成1位の和田康士朗(富山GRNサンダーバーズ)がともに19歳と若い(表9)。山本は捕手としての守備面、和田は脚力を生かした走塁面でまずはアピールし、徐々に打力をつけていくのが現実的な道だろう。一方、楽天5位の田中耀飛(兵庫ブルーサンダーズ)は長打力が自慢の選手で、今季は143打席で打率.422、15本塁打と圧倒的な成績を残している。今回は分析の対象外としただけに、BFLから初の本指名となった田中がNPBでどこまで通用するのかは、興味深く見守っていきたいところだ。

※データは2017年シーズン終了時点

文:データスタジアム株式会社 佐藤 優太