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独立リーグ

取り戻した野球愛でNPB目指す 知野直人(新潟アルビレックスBC)

9月下旬からルートインBCリーグの選抜チームがDeNA、ロッテ、巨人、オリックスと交流戦を行い、NPB入りを目指す選手たちが多くのスカウトを前に、猛アピールを続けた。
 ルートインBCリーグは2007年から公式戦が始まった独立リーグで、現在11年目。BCとは「Baseball Challenge」の略で、ビジネスホテルチェーンのルートインが冠スポンサーとなっている。
 選抜チームということもあり、各球団のカラフルなユニフォームが目立つが、その中でも際立つのが新潟アルビレックスBCのオレンジに「愛」のロゴが付けられたヘルメットだ。これは越後生まれの武将・直江兼続の兜をモチーフとしたもの。厳しい環境ながら情熱を持ってひたむきに野球に取り組む選手たちにとって最適なものに思える。

9月21日のロッテ戦では、第1打席の初球でスタンリッジからレフト前安打を放つなど高い対応力を見せた知野

 そんなチームで再び野球愛を取り戻し、NPB入りを目指しているのが知野直人(ちの・なおと)だ。
 知野は高卒1年目、身長181cm体重81kgの均整のとれた体格で走攻守三拍子揃う右打ちの内野手。公式戦に出場できない練習生契約だったが、7月13日に選手契約となると、後期リーグ28試合に出場し打率.350、4本塁打21打点をマーク。守備も「どこでも守れる印象」とNPB球団スカウトが評価する。
 この急成長を支えたのが楽天から新潟に派遣されている草野大輔コーチだ。知野は「下半身を使えるような打撃フォームにしたり、手投げのゴロ捕球など基礎からやりしました」と言い、「気にかけてもらえたことが嬉しかったです」と感謝する。

 もともと甲子園常連校でプレーしていたが、次第に野球に集中できなくなってしまい、ベンチ外で最後の夏を終えると高校3年の秋に退学。だが、野球からいざ離れてみると諦めがつかなかった。
 そして、通信制の高校に転校し高卒の資格を得て、地元・新潟で再起を図った。練習生契約のため公式戦には出場できず、来る日も来る日も練習に明け暮れ「必死に練習をやるのですが、それを見せるところ(試合)が無いので、どうしてもモチベーションは下がる日も結構ありました」と正直に振り返る。
 それでも熱心に指導をしてくれる草野コーチ、女手一つで支えて応援してくれている母への感謝が萎えそうな気持ち踏みとどまらせた。
「いろんな人に迷惑をかけてきたので、誰かのためにという気持ちで何とかモチベーションを保てました」
 そして、長い練習生期間を経て公式戦に出場すると、それまでの地道な取り組みの成果を存分に発揮してNPB球団スカウトの熱視線を浴びた。
 知野の成長を見守ってきた辻和宏編成部長は、「モチベーションの維持が難しい中でも、ひたむきに取り組んで課題の守備も向上しました。(人間的な成長のためにも)練習生の立場が良かったのかもしれないですね」と目を細める。

 運命のドラフト会議は10月26日。知野自身も「指名があるかどうかは半々だと思います。最善の準備をしていきたいです」とその時を待つ。
 また「熱心な新潟の首脳陣に出会えたことが一番でした」と話すように、たとえ指名漏れをしたとしても、取り戻すことができた野球愛を胸に、再び飛躍のきっかけを目指す場所が、今の知野にはある。

同僚からいじられて笑う知野。チーム最年少だがチームにも溶け込んでいる。

文・写真=高木遊