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プロ野球

総合指標・WARで見る新人王争いマッチアップ

■希少な遊撃手の新人王

 秋も着実に深まりを見せてシーズンも残すところわずかとなったこの時期、新人王争いの行方にも少しずつ注目が集まってきています。今年の新人王争いの特徴は、遊撃手が有力な候補として名を連ねていることです(表1,2)。セ・リーグは京田陽太(中日)、パ・リーグは源田壮亮(西武)がそれぞれレギュラーの座をがっちりとつかみ、攻守にアピールを続けています。新人王は投手が選ばれるケースが多く、遊撃手の新人王はとても珍しく価値のある存在です。過去に該当する遊撃手としてセ・リーグでは2006年の梵英心(広島)、パ・リーグは1997年の小坂誠(ロッテ)までさかのぼります。

 2人のライバルとなりそうなのは、やはり投手。セ・リーグはDeNAの先発左腕・濵口遥大が、パ・リーグはオリックスの先発右腕・山岡泰輔が一軍の舞台で成果を残していて、両リーグにおいて投打のマッチアップとなるであろうことが予想されます。
 しかし新人王を決めるにあたって、投手と野手の貢献度を比較するのは容易なことではありません。9勝6敗、防御率3.65の濵口と、打率.273、4本塁打、21盗塁の京田のどちらがタイトルにふさわしいか。従来の成績による判断は困難を極めます。

 そこで今回は選手の貢献度を測る物差しとして、セイバーメトリクスの総合評価指標であるWARを用いることにしました。WARは「代替可能な選手に比べて何勝分貢献したか」を測る指標であるため、ポジションごとの補正を行うことですべての選手を同じテーブルの上で比較することが可能です。

■セ・リーグマッチアップ


 セ・リーグは京田がWAR3.4を記録し、同2.5の濵口を上回る格好となりました。京田の最大の強みは守備力の高さにあります。Fieldingの12.9という値は平均的な遊撃手に比べて約13点分の失点を阻止したことを示していて、ベースとなるUZRではセ・リーグでもトップの数字を残しています。打撃面は四球や長打が少ないために数字が伸びませんでした。21盗塁を記録したスピード面も11盗塁死と失敗も多く、これらが2年目以降の課題となります。出場機会の多さは評価できるポイントで、故障することなく出場を続けることができたという点もWARの高さにつながっています。

 濵口の注目ポイントは奪三振割合(K%)24.1%という奪三振頻度の高さ。これはセ・リーグで100イニング以上投げた投手の中でも4番目の値となっています。反面、与四球割合(BB%)も13.0%と高く、これは100イニング以上の投手でリーグワーストでした。夏場に肩の違和感で登録抹消を経験し、イニングを伸ばすことができなかったことも悔やまれる点です。

■パ・リーグマッチアップ


 パ・リーグは源田がWAR4.4と非常に優秀な数字を残しています。これはリーグの野手でも柳田悠岐(ソフトバンク)の6.7、秋山翔吾(西武)の6.6、西川遥輝(日本ハム)の5.3に次ぐ4番目の高評価となります。最大の魅力はやはり守備で、Fieldingの22.5はセ・パ全選手の中でトップの数字となっています。データスタジアムでは守備の評価をセ・パで分けて行っているため単純比較はできませんが、ディフェンス面に関して国内ナンバーワン遊撃手の立場に最も近い存在である、と言えそうです。盗塁王を争うスピード面でも盗塁の失敗が少なく、優れたベースランニング技術に裏付けられた走塁面でもポイントを積み上げました。やや物足りない長打力による打撃面でのマイナスは小さくありませんが、守りと足の2つのツールでお釣りがくるほどの貢献を見せています。

 山岡のWAR3.3はリーグの先発投手の中でも7番目に位置する優秀な値で、即戦力の期待に応えるだけの成果を残しています。奪三振能力(K%)、制球力(BB%)はずばぬけた数値ではないものの、十分に水準を満たしています。ぜいたくを言えばもう少しイニングが伸ばせれば、と思われますが、1年目ということもあり首脳陣が無理使いを避けた結果であるのかもしれません。

■遊撃手の豊作年

 WARをベースとした貢献度の比較による結果は、セ・リーグが京田、パ・リーグが源田と遊撃手の2人がライバルを上回りました。ひざの故障で後半戦を棒に振ってしまった糸原健斗(阪神)も離脱するまでは遊撃手として活躍を見せていたことも合わせて考えると、今年は長いNPBの歴史でもまれに見る遊撃手の豊作年だったと言えるかもしれません。新人王の発表が行われるNPB AWARDSはまだ2カ月以上先のことですが、どのような結末を迎えるか楽しみに待ちたいところです。

※データは9月18日現在

文:データスタジアム株式会社
グラフィックデザイン:相河俊介