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高校野球

シリーズ・黄金時代① 大阪桐蔭
王者が冬の時代を乗り越えた時【3】

スカウティングが変わった?
技術に加え「野球好き」の選手を

「中に入って思ったのは野球がうまいことはもちろん、野球を本当に好きな選手が集まっている、ということでした。だからメンバーから外れたとなったりした時も、簡単に腐ったりする選手が少ないんじゃないかと思います」
 確かに最近の大阪桐蔭を見ていても、例えば大会メンバーから外れた時に、即チームのための裏方に徹し、働く姿を目にする。素材豊かな選手が揃っているだけに、切り替えの難しさを想像しがちだがそのあたりでこじれた話を聞かない。米川はここに現役当時の話をつなげてきた。
「僕と同期でいっしょに滋賀から大阪桐蔭にきた篠原大という選手がいました。投手で入ったんですけどうまくいかずに辞めたいという話になった。でも、そこで西谷さんとじっくり話をして、野手で頑張るとなって最後は1番レフトで甲子園でも活躍。辞めるとなった時には寮で同級生たちも『一緒にやろうや』と声をかけて説得したのを覚えています」
 西谷のこのあたりでの粘り、優しさ。そして同級生たちの対応。ともすればライバルが減ることに喜ぶ空気も生まれそうだが……。
「ふだんの練習からみんな相当な競争心を持ってやっていますが、でも、せっかくならチームで勝ちたい、やってきたみんなで勝ちたい、というのがすごくあったと思います。そんな風に思えるところが根っからの野球好きというところと関係するんじゃないかと思います」(米川)
 2002年から2005年。このあたりの時期でまさに部訓である「一球同心」の空気が強まり、一丸となり戦う姿勢がより強まっていったのだろう。岩下は社会人時代(日本生命)母校のグラウンドを訪ねるたびに感じたことがあったと言った。
「今ももちろん練習は厳しいんですけど、グラウンドが明るい、ということをすごく感じます。僕らの時代とは雰囲気が全然違っていて。当然、昔は水を飲んだらいけないとか、環境的なものからも、耐えてこそ、という部分がありましたけど、その違いを引いても、最近の桐蔭の選手は明るい。ここがやっぱり野球好きが集まっているな、と思うところですね。僕らの頃から西谷さんが『野球好きの集団であれ』と言っていましたけど、その言葉が年々形になっての今の雰囲気だと思います」
 OB3人が「誰よりも野球好き」と口を揃えた西谷自身の熱、芯の通ったスカウティング、コーチらを含めた理にかなった指導に引っ張られるように、02年夏の甲子園以降、4番平田良介、剛腕・辻内崇伸、スーパー1年生・中田翔が揃った05年夏にベスト4。スケール感たっぷりのチームで存在感を示すと、08年夏、12年春夏、14年夏、17年春とここ10年で5度の全国制覇。この夏には史上初、2度目の春夏連覇の大きな期待がかかる。まさに黄金期の只中を感じさせる強さだが、OBに驚きはない。
「現役の時から、この感じでやっていけばどんどん強くなるというイメージはありましたから。今の姿にも驚きよりあるとしたら納得です」(米川)
 継がれ、つながれてのこの強さ、どこまで続いていくのだろう。

取材・文/谷上史朗 編集/田澤健一郎

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