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確実性のオリックス、長打力のヤクルト<データで振り返る日本シリーズ:総括編>

【写真提供:共同通信】

10月22日から開催され、熱戦続きで第7戦までもつれ込んだ「SMBC日本シリーズ2022」。オリックスが4勝2敗1分で26年ぶりの日本一に輝き幕を閉じた。

その日本シリーズをデータで振り返り総括していく。

■確実性のオリックス、長打力のヤクルト

 オリックスが2敗1分けの状況から破竹の4連勝を記録し、日本シリーズを制した。点差が大きく開いたのは第3戦(ヤクルト7-1オリックス)だけで、昨年に続いて接戦の続いた好勝負となった。このシリーズを打撃面で比較すると、総得点がオリックスの22に対し、ヤクルトが23とわずかに上回っている(表1)。戦前から指摘されていた通り、ヤクルトの強みは三冠王の村上宗隆を中心とした長打力。このシリーズでもチーム通算でオリックスの倍以上となる7本塁打を放った。

 このシリーズで2本塁打を放った吉田正尚に長打力を依存する格好となったオリックスだったが、チーム打率ではヤクルトを上回る.247を記録。安打となった打球の方向割合では反対方向への流し割合が最も高く(表2)、強く引っ張るよりも確実性を意識した打撃を志向する傾向が見られた。シーズン同様に犠打を多用するなど、慎重な野球を貫いた格好となる。

 確実性のオリックスと長打力のヤクルトという対比ができるが、異なる観点から両軍に差が付いたポイントがある。打撃イベント別に発生した得点を示したのが表3で、オリックスは単打を中心に、ヤクルトは本塁打で最も得点を記録したのは先のデータと共通した傾向と言える。

 その一方でオリックスは失策で4つの得点を記録。第5戦の逆転勝利につながるマクガフの悪送球や、第7戦の満塁の走者一掃となる塩見泰隆の落球など、勝負の分け目ともなる場面での失策が得点につながった。シリーズトータルでの失策数はヤクルトの5に対してオリックスは6を記録しており、守備のミス自体は大きな差はない。戦力的に非常に拮抗した戦いの中で、重要な局面におけるほんのわずかなミスが勝敗を分けた、と解釈できそうだ。

■例年にない継投判断

 点差の開く展開が少なかったこともあり、両軍の投手陣は安定した内容だった。オリックスはエースの山本由伸が第1戦で4回4失点で負傷降板する誤算もあったが、シリーズを通じた先発防御率は2.53とヤクルト先発陣とほぼそん色ない数字にまとめている(表4)。救援陣ではオリックスの速球派右腕たちが注目される機会が多かったものの、実はヤクルト救援陣の方が優れた防御率を残している。マクガフの乱調が印象的ではあったが、石山泰稚、清水昇、木澤尚文らはシーズン同様に安定した投球でベンチの起用に応えている。

 このシリーズでは1試合で100球以上投げた先発投手がゼロ、という珍しい戦いでもあった。短期決戦では比較的早い回から投手を送り込む傾向はあるものの、近年の日本シリーズ(5試合以上の年度を対象)で先発の平均投球回が5未満、平均投球数が80球に満たないのはともに初めてだった(表5)。オリックスが第2戦で4回まで無失点と好投していた山﨑福也を下げたり、第4戦で5回の途中に無失点だった山岡泰輔にリリーフを送るなど早い決断が目立った。

 両軍とも早い回から動くことができたのは、ブルペンに信頼を持っている証でもある。特にオリックスブルペンは奪三振能力の高い投手を複数控えており、シリーズの救援奪三振率は11.73と非常に優れた数字を残した。このシリーズで全国に顔を売った宇田川優希は、4試合に登板し5回2/3を投げて10個の三振を記録。日本シリーズのMVPは活躍した野手に送られる傾向が強く今回もそうなった(杉本裕太郎が受賞)が、宇田川の打者を制圧するリリーフはそれに匹敵してもおかしくないほどのインパクトだった。

※データは2022年日本シリーズ終了時点

文:データスタジアム株式会社