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山田の3ラン、オリックス投手陣の厚さ、吉田正の劇的HRをデータで紹介!<データで振り返る日本シリーズ第3,4,5戦>

【写真提供:共同通信】

 連日競った戦いの続く日本シリーズは、第5試合を終えて共に2勝2敗1分けの五分。点差が開いたのはヤクルトが勝利した第3戦のみで、どちらが勝利してもおかしくない緊迫した戦いが続いている。第3戦まではヤクルトが2勝1分けと優勢な流れだったものの、オリックスも意地を見せて第4戦、第5戦と連勝。特に第5戦は9回に劣勢をひっくり返しての逆転勝ちで、チームに勢いをもたらす勝利となった。今回も各試合のポイントとなった場面を、データを用いながら紹介する。

 第3戦で勝利を導く一発を放ったのが山田哲人だった。5回2死一、二塁の場面で、それまで安定した投球を続けていた宮城大弥からレフトスタンドへ先制3ラン。前日まで9打数で無安打5三振と不振に陥っていたが(表1)、ヤクルトベンチからの信頼は変わらず、それまでの3番から1番に打順を変えて打席に立っていた。

 山田が捉えたのは真ん中低めのストレートで、捕手の伏見寅威が構えた内角のコースから逆球気味にずれたものだった。今季の山田は低めのゾーンで8本塁打を放っているものの、打率は.214と低迷(表2)。やや安定を欠いたレギュラーシーズンの成績の一因となっていたが、日本シリーズの舞台で苦手なボールを仕留めたのはさすがの一言だった。その後の第4戦、第5戦と無安打に終わるなど復活の一打とまでは言えないものの、再び神宮に戻るシリーズ後半でも劇的なアーチを描くことはできるかが注目される。

■パワーピッチャーで制圧

 第4戦はオリックスが1点を守り切り、シリーズ初勝利。好投を続けていた山岡泰輔を5回途中であっさりとマウンドから下げ、宇田川優希、山﨑颯一郎、ワゲスパックとリレーして完封した。3者はいずれも長身右腕で、力強いストレートを武器とするパワーピッチャー。3人合わせてこのシリーズでストレートを安打とされたのは1本のみ(表3)。球速もコンスタントに150キロを超え、オリックスブルペンの力強さを象徴するデータとなっている。

 1死三塁と山岡が招いたピンチで登板した宇田川は、山崎晃大朗、山田哲人を連続三振に仕留める好リリーフ。その決め球となったのが前述のストレートではなくフォークだった。千賀滉大の「お化けフォーク」を連想させる宇田川のフォークはレギュラーシーズンでも猛威を振るっており、27打数で19個の三振を記録している(表4)。力強いストレートに気を払いながら対応するのは難しいボールで、シリーズ後半のここぞという局面で再び威力を発揮しそうだ。

■「敬遠しない」はセオリー通り

 第5戦、劇的な逆転サヨナラ勝利を導いたのは、やはり吉田正尚のバットだった。エラーなども絡んで1点のリードを失い落胆の色も見えたマクガフから、ライトスタンドに消える特大のサヨナラ2ラン。捉えたのはほぼ真ん中のスプリットで、打った瞬間に柵越えを確信する当たりだった。吉田はレギュラーシーズンでもストライクゾーン内の落ちる系球種にはめっぽう強く、打率は4割を超える(表5)。フォークやチェンジアップなどの球種は一般的にボールゾーンで勝負するのが前提のため、マクガフの一球がそうだったようにストライクゾーン内に入ってくるのは失投。大一番でその失投を逃さなかった吉田が見事だった。

 SNSなどで「吉田を歩かせていたら……」といった声も散見された。2死一塁の状況で、後続が杉本裕太郎というシチュエーションを考えると吉田と勝負しない、という選択も一見合理的であるように思える。しかしNPBの敬遠のセオリーとして、「走者を進塁させる敬遠」をためらう傾向がある。今季のレギュラーシーズンの敬遠の内、ランナーが一塁にいながらも敬遠策を取ったのは一三塁の状況のみ(表6)。得点圏まで走者が進んでしまうため、基本的に一塁が空いていない場面では敬遠という選択を行わない。第2戦でヤクルトは吉田に対して2つの敬遠を与えたが、二三塁、三塁といずれも一塁が空いている状況だった。

 ヤクルトバッテリーとしては吉田と真っ向勝負する気持ちではなく、厳しいコースを攻めて結果的に歩かせても構わない、という狙いだったと想像できる。結果的に0ボール1ストライクからど真ん中にスプリットが抜け、吉田がそれを見逃さなかった。

残りの試合も接戦が予想され、見逃せない戦いとなりそうだ。

※データは2022年10月28日現在

文:データスタジアム株式会社