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社会人野球

変貌遂げたアマ球界のスター左腕 林優樹(西濃運輸)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 社会人編】

林優樹(はやし・ゆうき)
●守備 投手 ●身長・体重 174cm・75kg
●生年月日 2001年10月29日 ●所属 西濃運輸
●球歴 近江高→西濃運輸
●出身地 京都府 ●投打 左左

 時は来た。その言葉がぴったり当てはまる。近江高のエースとしてプロ志望届を出した3年前のドラフト会議では、甲子園大会での知名度と裏腹に、手ごたえのないまま指名漏れした。しかし社会人の3年間で状況を一変させた。今年のドラフト会議を前に、NPBのほとんどの球団から調査書の提出を求められている。

 投球スタイルは大きな変貌を遂げた。ストレートは最速146キロに伸びた。技巧派だった高校時代は130キロ台中盤までにとどまっていたが、今や投げっぷりよくストレートで押していく。社会人1年目に意図して体重を増やし、体づくりと投球フォーム改良に励んだ結果、一冬越えて違う自分がいた。

 もうすぐ21歳の若武者に対し、プロ側はどんな見方をしているのか。ヤクルト・中西親志スカウトは、9月の日本選手権予選を視察した際にこう話していた。

「高校時代から手先が器用で、球は低めに集まっていました。社会人で球速が上がり、アベレージも142~3キロで投げられている印象です。一時、スピードを意識しすぎにも見えましたが、ここへきて打者を見ながらピッチングできるようになってきました。まだまだの部分はありますが、これからの成長が見込めます」

 来年いきなり“即戦力”とはならないかもしれないが、プロとしての土台や学びを築いた先に活躍が待つ。左投手という点もアピール材料だ。

 ここまでの歩みでは苦難も味わった。高校2年夏の甲子園準々決勝では金足農高にサヨナラ2ランスクイズを許し、マウンド前に立ち尽くした。悲運の左腕は3年秋のドラフト会議で指名漏れも経験。そのたびに涙が頬を伝った。社会人1年目は左ひじ痛の不安にもかられた。

「甲子園のあの試合後は悔しくて眠れませんでしたが、あの試合があったからすごく成長できました。社会人1年目に投げられない時期も苦しく、ずっとしんどい気持ちが続きました。でも、それを乗り越えられたので今の自分があると思っています」

 今年6月の都市対抗予選では、トヨタ自動車との第4代表決定戦で先発を任されるも、2回2失点で降板。大事な試合での先発マウンドは初めてだったが、空回りに終わった。そのときも試合後、目を赤くしていた。

「やっとつかんだ先発だったのに、期待に応えられず悔しかったです。チームを背負い、常に死に物狂いで戦っている気持ちでいますが、結果は結果なので」

 しかし、涙の潮目は変わってきた。9月にあった日本選手権予選。負ければ予選敗退となるがけっぷちの一戦で先発し、日本製鉄東海REXを相手に6回1失点と好投。試合後に思いが溢れ、目にはやはり涙が浮かんだ。

「自分の人生を変えてこい、と試合前に先輩たちに言われていました。チームにとっても負けられない試合だったので、何としても勝ちたかったんです」

 純粋な思いを胸に打者に立ち向かってきた、アマ球界の涙もろきスター投手。今年のドラフトで、どんな涙を見せることになるか。願うはうれし涙だ。

文・写真=尾関雄一朗