- 大学野球
2022.10.07 15:25
大学選手権ベンチ外で見つけた「エンジョイベースボール」の境地。広角に放つ長打力と確実性を兼ね備える外野手 萩尾匡也(慶應義塾大)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 大学生編】
広角に放つ長打力と確実性を兼ね備えた打撃に加え、俊足を生かした守備範囲の広さも光る外野手。
もともとはバスケットボール少年だったが、福岡ドームに連れられた際にダルビッシュ有(当時日本ハム/現パドレス)の投球に衝撃を受けて、すぐさま同投手のグラブを買って野球の道へ。「ただただ楽しいという気持ちでやっていました」と野球にのめり込んでいくと、文徳高時代には体重を15キロ近く増やして高校通算46本塁打を放つスラッガーにまで成長した。
当然プロ注目の選手となっていたが「中学生の頃くらいから、父に“東京六大学で野球をやってほしい”と言われ、勉強もある程度やっていたので」と学業成績も優秀だったため、慶應義塾に進学した。
大学では2年春(コロナ禍の影響で8月に開催)にいきなり初打席初本塁打を右中間スタンドへ放つ鮮烈なデビューを果たした。一方で「あれはたまたまです」と振り返るように、その後は秋まで無安打で終わった。翌春も打率.250と思うような結果を残せず大学選手権はベンチ外に。この時は泣いて悔しがり、夜も眠れない日々が続いた。
だが、これ以上ない悔しさが萩尾を目覚めさせる。
「3年の春までは“打たなきゃいけない”という気持ちが強かったんです。でも眠れなくて天井を見ていたら“楽しいから始めた野球なんだよな”と気づいたんです。本当は野球が好きだし目立つのも好き。そうした気持ちを忘れていたんです」
こうして心機一転、練習は熱を帯び、逆方向への長打も増え始め、その年の秋は打率.333を打ってレギュラーを奪取。明治神宮大会では1番で起用され打率.462、バスターで逆方向のライトスタンドへ運ぶなど2本塁打を放って準優勝に貢献した。
そして今春のリーグ戦13試合で5本塁打を放ち侍ジャパン大学代表に選出。同年代トップレベルの選手たちから多くの刺激や学びを受けた。
堀井哲也監督は将来性について「俊足で長打力もある。高いレベルの走攻守揃った選手になるのか、もしくはそのどれかを極めていくのか。選択肢を多く持っている選手です」と期待する。
学生生活最後の秋も、2節6試合を終えた10月初の段階で打率.481、1本塁打と絶好調。挫折を経てたどり着いた「エンジョイベースボール」の境地で、王座奪還とドラフト指名へ邁進している。
文・写真=高木遊