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中日ドラゴンズ又吉克樹選手インタビュー~「子供たちがいるからこそプロ野球がある」沖縄県人会への思い


2019年オフの野球教室開催時 ©プロ野球沖縄県人会

又吉克樹選手は2018年に出身地である沖縄で「プロ野球沖縄県人会」を立ち上げ、毎年オフに同郷の選手たちと野球教室を開催し、地元の野球振興や地域活性に貢献している。今回は県人会立ち上げの経緯や活動に込めた思いについてお話を伺った。

――「プロ野球沖縄県人会」を立ち上げた経緯について教えてください。

又吉 僕は生まれ育った沖縄県浦添市で野球教室を開催するのがプロに入ってからの夢だったんですけど、そのことをアドバイザリー契約しているローリングスの担当者の方に相談したところ、「これからプロに入ってくる地元の選手とも縦の繋がりをつくりながらみんなで活動を広げていけば、地域の大きな母体になるのではないか」と提案があったんです。そこで、ちょうどその前年にできた静岡県人会の活動も参考にさせてもらって、沖縄も県人会という形で活動をやっていこうということになりました。

――立ち上げの際に苦労したこと、大変だったことはありますか。

又吉 有難いことに、「シーズン中は競技に集中してくれていいよ」と言っていただいて、すべてローリングスや地元の方々が段取りを整えてくれました。その結果、テレビ局や新聞社、企業など地元のいろんな方々が関わってくれることになって、僕もびっくりするくらい準備がスムーズに進んだんです。改めて、すごくいい縁に恵まれてバックアップしていただけたなと。皆さんのおかげで続けられているのでとても感謝しています。

――2018年の初年度は又吉選手1名のみの参加でしたが、2回目にはオリックス比嘉幹貴選手、比屋根彰人選手(当時)、宜保翔選手、DeNAの嶺井博希選手、西武の與座海人選手が参加。3回目にはさらにDeNA神里和毅選手、オリックス大城滉二選手、宮城大弥選手も加わり、参加選手がどんどん増えていきました。

又吉 メンバーが増えていくのは嬉しいですね。同じ沖縄出身でも横の繋がりって今まで意外となかったので、選手にとってもいい交流の場になっているのかなと。2回目の時は宜保がちょうどドラフト指名された直後で、挨拶しに来てくれたんです。3回目の時は宮城が指名後に来てくれて。プロ入り前に先輩にいろいろ話を聞ける機会にもなったようで、彼らも「事前に話が聞けて助かりました」と言ってくれました。メディア対応や子供たちへの立ち居振る舞いはプロ野球選手の価値を保つためにはとても大事なことですが、若い選手が先輩たちからそういうことを直に学べる場にもなっていると感じます。

――地元の反響や、野球教室に参加した子供たちのリアクションはどうでしたか。

又吉 沖縄は春季キャンプがありますけど、公式戦は開催されたとしても年に1、2試合なので、地元の人たちにとってプロ野球はまだまだ遠い存在です。だからイベントの時はみんなすごく興奮してくれました。いろんな球団のユニフォームを着た選手が一気に集まることってそんなにないので、その一員の僕ですら「豪華だな」と思いましたね。一人でも多くの子に見てもらいたいなという思いがあります。

――コロナ禍でもオンラインでイベントを継続されていますね。

又吉 対面での野球教室が難しいとなった時に、それまで協力してくださっていたテレビ局の方々が「せっかくここまで続けてきたのにやめたらもったいない。試験的だけどスタジオを借りてオンラインでやりましょう」と言ってくれて。やはりどんな状況でも続けることがいちばん大事だと僕も思っていたので、いろんなアイデアを出していただいて本当に助かりました。今年も12月26日にオンラインで開催する予定で準備を進めてくれています。

――これから沖縄県人会で実現させたいことはありますか。

又吉 当初は、浦添市だけでなく選手それぞれの出身地を毎年順番に回っていく予定だったんです。3回目からコロナになってしまったのでまだ実現できていないんですが、すでにいくつかの市町村からお声がけをいただいています。コロナが落ち着いたらまた再開して、なるべく多くの市町村を回っていきたいですね。そして、「県人会の野球教室で教えてもらいました」という子が今度はプロ野球選手として教える側になったり、もしくは運営側で支えてくれたりと、そういうサイクルを実現することが僕の夢です。そのためにも長く続けていきたいと思っています。

――こういった活動が各地域に広がれば、加速する野球離れにストップをかけることもできそうですね。

又吉 僕がローリングスとアドバイザリー契約するときに、「子供たちがいるからこそプロ野球がある。そうでなければ野球はできなくなる。だから、子供たちが憧れる選手になってください」と言われました。県人会の活動も、すべてはその思いから始まっています。ローリングスもこういった活動はどんどんやろうと言ってくれて、思いを共有できる方々がまわりにいることが本当に有難いです。だからこそ、子供たちに憧れてもらえるような選手になるために日々のプレーを頑張ろうと思えますね。

©中日ドラゴンズ