- 独立リーグ
2021.10.05 15:30
1年間のブランク乗り越えた「四国の絶対エース」近藤壱来(香川オリーブガイナーズ)
【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 独立リーグ編】
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9月30日現在で10選手にNPB球団からの調査書が届いている四国アイランドリーグplus。その中でドラフト最上位指名も期待される香川オリーブガイナーズの絶対的エースだ。「球速で打ち取るタイプではない」と自らも語るように、長所は気迫を前面に出しつつ、総合的な能力で三振を奪う投球スタイルである。
最速149キロのストレートに加え、140キロに届く高速スライダーとフォーク、120キロ中盤のスライダー。さらに100キロ台のカーブといったバリエーションに富んだ投球で、3年ぶり7回目となるリーグ総合優勝の大きな原動力となった。
レギュラーシーズンでは20試合に登板して、開幕12連勝含む15勝3敗で最多勝を獲得するなど132回を投げて142奪三振・防御率2.18と安定した成績を残した。さらにトリドール杯チャンピオンシップでは高知ファイティングドッグスの藤井皓哉(元広島東洋カープ)に投げ勝っての完封(1対0)に続き、2戦目も最後の1人を三振で斬って大会MVPを受賞した。
ただ、ここまでの道のりは波瀾万丈だった。鳴門渦潮高(徳島)では最速143キロをマークするも甲子園出場はならず。社会人野球の三菱自動車倉敷オーシャンズでは1年目から先発マウンドを任されるも、2年目途中で方向性の違いから退部。独立リーグに新天地を求めるが、それも叶わず。ついに高卒3年目には会社も辞め、徳島の地で空虚な日々を過ごすことに。「当時の僕は何も世間が解らなかった。トライアウトに茶色い髪やピアスで参加したら、そりゃ落とされますよね」と苦笑いを交え振り返える。
それでも情熱の種火は残っていた。2019年秋、「どんなことがあっても野球は辞めるな」と激励した三菱自動車倉敷オーシャンズ時代のチームメイト・矢部佑歩ら数多くの人たちからエールをもらった近藤は、再びボールを握り香川オリーブガイナーズに入団。昨年は27試合に登板し4勝4敗・防御率3.18。今季は昨年途中で東京ヤクルトスワローズへのNPB復帰を果たした歳内宏明が背負った「11」を引き継ぎ「エースになること」を使命として臨んだ。
そんな近藤に対し、2018年のセ・リーグ最優秀中継ぎ投手も背中を押した。今季から選手兼任で就任した近藤一樹投手コーチだ。「X脚がいいから、内旋を活かすトレーニングをしよう」と、独特の身体の動きを出力につなげるトレーニングを指示。「自分で考えて野球を勉強するようになった」という努力は「力まなくてもしっかり投げれば相手を押し込めるようになった」と話す球質向上にもつながっている。
また、近藤コーチも「1年間のブランクがあっても上に注目されるレベルになってくれたし、伸びしろがあることを示してくれた」と太鼓判を押す。
独立リーグ2年目を終えて迎える運命の日。「もっと上手くなりたい」と飽くなき探究心を持つ男は、熱き心と香川オリーブガイナーズへの感謝を携え、新たな舞台への扉をこじ開けられるか。
文・写真=寺下友徳