- 大学野球
2021.10.05 12:30
ストレート・変化球とも高次元の「地方大学の星」 隅田知一郎(西日本工業大)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 大学生編】
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今春の全日本大学野球選手権で一躍、その名を轟かせた「地方大学の星」的存在だ。初戦となる上武大戦で先発すると、ブライト健太に打たれたソロ本塁打のみの1失点で8回4安打14奪三振。試合は惜しくも0対1で敗れたが、上武大がその後の3試合で21得点を挙げて4強入りしたことを考えれば、強力打線をほぼ完璧に抑えたという評価ができるだろう。
その日最速147キロ(自己最速は150キロ)のストレートにチェンジアップ、スライダーやスプリットなどを自在に投げ分けた。どの球種も制球とキレ良く冴え渡る姿に、スカウトたちは「これはドラフト上位だ」と口をそろえた。
長崎・波佐見高では2年秋からはエースとなったが10月の投球中に左肘を疲労骨折。そこから約7ヶ月半にわたってリハビリ生活を強いられた。
だがこの期間に「最後の夏までに、もう一度マウンドに戻りたい」「怪我をする前以上の自分になる」と覚悟を決めて、やれる範囲のトレーニングを目の色を変えて取り組んだ。すると復帰後に球速が135キロほどだったものが、140キロを計測するまでになり、夏には143キロを計測。成績も伴い、主戦格として長崎大会で好投を続けて、ついには甲子園出場。彦根東の増居翔太(現慶大)と投げ合い、敗れこそしたものの「親への恩返しの気持ちで投げました」と感謝を目に見える形で示すことができた。
大学は、故障時から声をかけ続けてくれていた西日本工業大の武田啓監督に恩を感じて進学。大学は九州地区大学野球連盟の北部リーグに所属し、中央球界と比べると決して注目度は高くない環境だが、隅田は「関東のリーグに比べたら環境は劣るかもしれないがやるのは自分次第」「そこまでの選手じゃないと思っていたので目の前のことに精一杯でした」と一心不乱に練習に励み、その積み重ねが今の姿と評価に繋がった。
秋季リーグでも武田監督が「春に比べてプレッシャーなくのびのびと投げています。絶好調でこの秋が一番良いですね」と話すほど好投の連続でドラフト1位指名の可能性も大いに高まっている。あるスカウトは「出力の高さもあるし、抜く球や引く球のメリハリがついていて結果の出せる投手」と話すように、即戦力の期待もかかる。
逆境をも力にし、妥協することなく力を伸ばしてきた左腕の成り上がりはまだまだ続いていきそうだ。
文・写真=高木遊