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埼玉西武ライオンズ栗山巧選手インタビュー~「絶対にひとりじゃない」小児がんの子どもたちにエール


©SEIBU Lions

9月4日に2000本安打の偉業を達成した栗山巧選手は、2014年から小児がん患者とその家族の支援を行い、小児がんの子どもたちを支える活動のシンボルマークであるゴールドリボンのリストバンドを着用して、その啓発に尽力してきた。そこにはどんな思いが込められているのか。小児がん啓発月間である今月、栗山選手にお話を伺った。

――栗山選手が小児がん患者の支援をすることになったきっかけを教えてください。

栗山 障害を持つ子どもやその家族を支援する「所沢市 手をつなぐ親の会」のクリスマス会に参加したことがあって、何かほかにも自分にできること、力になれることがないかと考えていたところ、球団の方から「がんの子どもを守る会」という団体があるので支援してみてはどうかと提案をいただきました。それが支援するようになったきっかけです。

――小児がんのお子さんやご家族を球場にも招待されていますが、これはどんな思いからですか。

栗山 球場に招待したいと思った理由の一つは、お子さんやご家族に気分転換してもらいたいということです。中には野球をよく知らない子もいると思うので、スタジアムに来てもらえたら野球やライオンズのことを好きになってくれるかもしれないし、何より気晴らしになるんじゃないかなと。「今日は体調大丈夫かな」とか「楽しんでもらえていたらいいな」と思っていつも接しています。

――支援を始めてから7年が経ちますが、小児がんに対する世の中の理解は進んでいると思いますか。

栗山 その辺りについては僕自身まだまだ勉強できていなくて、十分な理解を得られていないというのが正直なところなのでコメントするのが難しいのですが、やはり医療がもっともっと発展していってほしいですし、それによって一人でも多くの子どもやご家族が苦しみから解放されてほしいという願いはあります。そんな中で僕にできることは、気分転換してもらったり、元気づけたりすることなのかなと。

――「小児がん啓発月間」としてゴールドリボンを野球界全体で広げていこうという動きもありますが、長年リストバンドでゴールドリボンの啓発をしてきた栗山選手は、この動きをどうご覧になりますか。

栗山 プロ野球を通じて小児がんが世間からもっと注目されて、それを機に研究開発が少しでも進む動きができれば、将来的には多くの子どもがよりよい医療を受けられることになるので、野球界が“応援団”となって啓発していくのはとてもいいことだと思います。ただ、それが関わる皆さんのプレッシャーにだけはならないように、進め方には十分な配慮が必要ですね。

©SEIBU Lions

――2000本安打という偉業を達成された今、改めて小児がんの子どもたちにどんなメッセージを伝えたいでしょうか。

栗山 ひとりじゃない、ということです。まわりには親御さんもいるし、医師や看護師の方々もいる。だから絶対にひとりじゃないんだということは伝えたいです。僕たちもできる限りのサポートをしたいといつも思っているし、もちろんこれからも支援を続けていくので、希望を持って力強く前に進んでいってほしいです。

――栗山選手はそのほかにも震災復興支援や地元の野球振興など、いろんな活動をされています。プロ野球選手が社会に還元することの意義をどう捉えていますか。

栗山 最近は文武両道で進んできた選手もたくさんいますが、僕らの世代はどちらかというと野球しかやってこなかったタイプ。ただ、一人の力でプロ野球選手になれたわけではありません。多くの方の支えが合って今があります。だからこそ、自分たちがこうして行動を起こせる立場になった今、サポートが必要なところに手を差し伸べるのは僕らの大切な役割です。誰しも支え合って生きているわけですからね。そういう意識がプロ野球選手一人一人に生まれてくれば、スポーツを取り巻く環境ももっとよくなっていくはずです。注目されている選手は今もたくさんいるし今後もどんどん出てくると思うので、その中からそういった役回りを担える選手が一人でも多く出てきたら、それは素晴らしいことだと思います。

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