- 大学野球
2020.10.26 12:00
日本ハムが1位指名公言。不屈の5年間で掴んだ最速156キロ 伊藤大海(苫小牧駒澤大)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 大学生編】
既に地元・北海道の日本ハムがドラフト1位指名を公言している最速156km/h右腕。駒大苫小牧高では2年春のセンバツ甲子園で完封勝利を挙げるなどして、駒澤大へ進学。1年春から登板機会を得ていたが10月に中退。翌春に苫小牧駒澤大に再入学するという異色の道を歩んできた。
規定により1年間は公式戦に出場できないため、1年目はリーグ戦登録されずに練習に明け暮れた。その成果や溜まった思いを一気に吐き出すかのように2年春に覚醒。チームを全日本大学野球選手権に導くと、初戦の日本文理大戦で最速151km/hを計測するなどして自責点2で完投。チームに全国大会初勝利をもたらした。
そしてその好投がきっかけで侍ジャパン大学代表の選考合宿に招集され、以降は代表の常連となり守護神に定着。一昨年と昨年の国際大会では15試合21回3分の2を投げて自責点はわずかに1点のみ。重要な場面でも動じない不屈のメンタルでハーレムベースボールウィークや日米大学野球の優勝に大きく貢献した。
最終学年となった今年はチームとしても侍ジャパンとしても集大成を見せるはずだったが、新型コロナ禍によって全国大会・国際大会とも中止になってしまった。それでも伊藤は「想定はしていたので仕方ないと思いました」と事態を飲み込み、大学野球最終試合となった10月12日の北海道王座決定戦に臨んだ。
指名打者制がある中で7番・投手で先発。2回には本塁打、3回には連打を浴びて1点ずつを失ったが、ストレートは何度も150キロを計測。カットボールやスライダーなどの変化球も「これぞドラフト1位候補」というキレだった。もともと長いイニングをこの日は投げる予定ではなく5回3安打3四球10奪三振2失点でマウンドを降りた。
さらにその後は左翼手として出場を続けると、9回表にはあわや本塁打という痛烈な当たりの二塁打を放ってガッツポーズを見せるなどチームを盛り立てた。その裏に大飛球が飛び込んだ伊藤のわずか先に落ちて同点打となり勝利で締めることはできなったが、3対3の引き分けという結果と波乱万丈の大学野球生活を終えて清々しい表情でグラウンドを去った。
「4年前に決断した時に考えていた姿に近づくことができたので、良い形で26日を待つことができます」
自ら道を変えることを決め、他の大学生候補より1年長い下積みを積んだからこそのたくましさも身につけて、伊藤はプロという大海原に挑んでいく。
文・写真=高木遊