- 独立リーグ
2020.10.23 15:55
川上憲伸の「11」を背に刻む。魂の150キロ右腕 戸田懐生(徳島インディゴソックス)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 独立リーグ編】
7選手にNPB球団からの調査書が届いている四国アイランドリーグplus(10月20日現在)。その中で徳島インディゴソックスの戸田懐生は、高知ファイティングドッグスの最速153キロ右腕・石井大智(秋田高専卒3年目)とともに最注目とされる最速150キロ右腕だ。
「リリースが指にかかるように」と逆算された2段モーションで全身を使って放たれるストレートとスライダーにカットボール。さらに今季、左打者対策として編み出したスプリットは、身長170センチとは思えない高い位置のリリースからキャッチャーミットに突き刺さる。
そんな戸田は愛知県高浜市の出身。親と1学年上の兄・凌斗さんから影響を受け高浜軍(軟式)で野球を始めてからずっと投手を務めてきた。高浜衣浦シニアを経て「神宮で投げことができる憧れもあった」と進学した東海大菅生(西東京)では2年夏に1学年上の松本健吾(亜細亜大3年)との2本柱を形成し甲子園出場。聖地でも3回戦の青森山田(青森)で最速144キロを出し6安打7奪三振1失点完投するなど、3試合に登板し防御率0.69の好成績を残した。
当然、最高学年では「軸になって責任を持ってやろうと思っていた」と言う戸田。しかし状況は暗転。秋を終えた矢先には右ひじを故障し退学、愛知に帰郷した。通信制のKTCあおぞら高校に通いながらも、ボールを握ることはなかった。
ただ高校を卒業し、ようやくケガも癒えた昨年。「ずっと野球をやってきていたし、自身自身も物足りなさを感じていた。プロ野球選手になるための最終手段として」と徳島インディゴソックスへの入団を決断。昨年はストッパーとしてリーグ戦は17試合19回3分1を投げて防御率0.00でリーグ優勝に大きな貢献を果たした。
続くルートインBCリーグ王者・栃木ゴールデンブレーブスとの日本独立リーグ・グランドチャンピオンシップでは、西岡剛(元千葉ロッテ)らとの対戦を通じ「緊迫感のある試合を通じてレベルアップできる」と実感。ドラフト解禁年となった今年は先発ローテーションの軸になった。体重も増量して臨んだ結果、ここまで17試合に登板し、111回3分の1 を投げて9勝4敗・131奪三振・防御率1.13(10月21日現在)。名実ともにエースの存在感を示している。
子どもの頃から憧れる投手は「魂の投球」で鳴らした川上憲伸さん(元中日、ブレーブス)。甲子園のマウンドでも背負い、現在も川上さんの象徴でもある「11」を背中に刻む戸田は川上さんが高校までを過ごした徳島の地から「200勝と30歳前半でMLB・100億稼げる選手になる」ための入口に立つ。
文・写真=寺下友徳